『念仏と黙祷は違うのでしょうか』

念仏と黙祷は同じような(亡くなられた方を偲ぶ)場面で用いられることも多いことから同じような意味であると考えている方が多くいらっしゃいますが、実は意味は全くといっていいほど異なります。

まず黙祷の意味は、広辞苑で調べてみると、「無言で神や死者の霊に祈ること」と書かれてありました。神に何を祈り、死者の霊に何を祈るのでしょうか。それはそれぞれの立場や場面で中身が大きく変わっていると思われます。私も時々黙祷をささげるという場面にあいますが、私は正直頭の中はからっぽ、いわゆる『無』の状態ですのでやはり他の方と同じ黙祷をささげていたとしても、中身は随分異なると言わざるをえません。人それぞれの気持ち次第、といったところでしょうか。

亡き方を偲んでゆかれる時に『念仏』をお称えされる方もおられることかと思います。手を合わせて合掌した状態で、『南無阿弥陀仏』と声に出してお念仏するわけですが、黙祷が無言な状態であるのに対して、お念仏ははっきりと声に出してお称えいたします。合掌は仏さまにありがとうと感謝する姿です。合掌は多くのいのちと多くの人たちに感謝する姿です。どんな逝き方にせよ亡くなった人たちは、必ず浄土に生まれ仏さまと同じ悟りの身と成らせていただく、という仏さまの願いを受けとめていく姿です。そのことをお念仏を称えすることによって仏さまのその声・その願い・その救いを知らされていくことなのです。

私たち浄土真宗のみ教えに生きる者は、お念仏お称えしていく中でみのりをいただきながら願いの中に生かされている尊い命を輝かせてすごしてゆきたいものです。