「生涯トライアウト」(中旬)プロレスは、親子の絆を育む

昔は、各地域にみんなをまとめてくれたガキ大将がいました。

逆らうと恐いけど、弱い者いじめはしない。

何かあったら守ってくれるヒーローでした。

そういう人たちのお蔭で、少なくとも私が幼少の頃には陰湿ないじめというのはなかったです。

最近のいじめはネットに誹謗中傷の書き込みをするとか、得体が知れない感じがしますね。

個人的な考えですが、気に入らないことがあればお互いに話し合いをして、それでもだめなら泥んこになって一回くらい戦ってみたらいいんじゃないか。

そうすれば、お互いの良さがわかるのになって思います。

僕らの時代はそういう感覚でした。

戦ってけんかした人ほど今もつきあいが長いです。

お互いのいいところと悪いところが分かっているんですよね。

だから、相手の間違いなども平気で言い合えるんです。

そういう付き合いというものが、今どんどん少なくなってきていると感じます。

私は子ども達を前に、TEAMGAMILOCKチャリティープロレスの試合をしましたが、実はこれにはもう一つ大きなテーマがありました。

それは、お父さんお母さんと一緒に家族できてほしいということです。

なぜなら、子どもは親の姿を全部見ています。

子どもにだけ

「いじめはやめろ、自殺はやめろ」

と言うのは違うと思います。

ちゃんと子どもに愛情を持っているのか。

子どもの話に耳を傾けているのか。

「うちの子は悪くない、他の子が悪い」

と言う親の話をよく聞きますが、そういう親の姿を子どもは見ているんです。

私はプロレス会場で、伝えたい問題を両親に投げかけたかったんですね。

プロレスのいいところは、プロレスを通して親子のコミニュケーションや絆を生んでいくことです。

親と子どもがプロレスという共通の話題で盛り上がれるんです。

一つの共通の話題ができることで、家族の中で

「やっぱり殴る方も殴られる方も痛そうだったよね」

というような会話が聞こえてくるんですよ。

そりゃあ目の前で大きな男たちが戦う訳ですから、誰もが見ても痛そうですよね。

暴力とかじゃなくて、けんかにしても何にしてもそうなんですけど、殴る方も殴られる方も痛い。

体も痛いですが、一番痛いのは心なんです。

絶対お互いにいい気持ちはしないじゃないですか。

そういう角度からもプロレスは伝える力を持っていると信じて、私はチャリティー活動を続けてきました。

その結果、ちゃんと伝わったのかどうか。

これは一人ひとりの心に聞かなければ分からないことではありますが、私は少なからず伝わったと思っています。

全ての人に伝わらなくてもいいんです。

この活動をしたことで、私が伝えたかったことが、一人でも二人でも伝わってくれたらいいなと思います。

その一人二人のために、私はいのちをかけて、引退するまでの五年間、身を削ってプロレスの試合をやってきたんです。