「涅槃会(ねはんえ)」というのは何ですか。

お釈迦さまがお亡くなりになられた日を機縁として勤められる法要を涅槃会といいます。

一般的に私たちの「死」に対して「涅槃」とは使いませんが、仏教では「死」を「涅槃」とか「滅度(めつど)に入る」という意味で「入滅」(にゅうめつ)と言ったりします。

涅槃とはインドの昔の言葉の「ニルヴァーナ」の音写語で、その訳語が「滅度」ですので同じ意味をもちます。

無量無数の因縁によってただ今の瞬間のいのちが生かされているという「縁起」の事実への目覚めを基本とする仏教では、ただ今の私を私としてたらしめていたすべての因縁が過ぎ去って、寂滅したのが「死」であるという基本思想があり、「入滅」とは私とたらしめていたすべての因縁が滅したということになります。

岸辺に打ち上げられた波が、再び広く深く果てしない大海に帰っていくように、「死」とは私を私としてたらしめてくださった広大無辺ないのちの世界・「浄土」に帰っていくことであるといただいております。

「正信偈」の最初の「帰命無量寿如来」も、無量なる寿(いのち)としての如来の命に帰りますということですから、親鸞聖人がお釈迦さまの教説により阿弥陀さまのお浄にであい、そのいのちのふるさとである「浄土」に私も帰らせていただきますという力強い言葉であります。

ところでお釈迦さまは今から約2400年前に、80歳でインドのクシナガラという所で亡くなられました。

その時の様子を描いた絵が「涅槃図(ねはんず)」というもので、お釈迦(しゃか)さまのまわりにはたくさんの生き物が描かれています。

お釈迦さまの弟子だけでなく、多くの菩薩さまやインド以外の国の人々も集まっています。

また、動物や鳥、ヘビにムカデ、ミミズなど様々な生きものも描かれており、その生きものは52種類あるそうです。

お釈迦さまが亡くなられたとされる2月15日は、この涅槃図を掲げて涅槃会の法要を勤めたりもいたします。

私たちは自らの力で涅槃・滅度への道を歩むことは出来ません。

お釈迦さまが紹介してくださった阿弥陀さまに救われて、はじめてお浄土へと到ることのできるよろこびを、この涅槃会を通してあじわいたいものです。