鹿児島に本願寺の念仏が伝わりますと、為政者たちには、一向宗は嫌だなといった雰囲気が生まれてきました。
まず真宗を嫌悪したのが日新菩薩でした。
日新菩薩は、島津忠良といった人物ですが、鹿児島においては、島津家中興の祖といわれ、近世の島津家、薩摩藩を作り上げた人として高く評価されています。
藩主ではありませんが十五代貴久の父です。
それはともかく、近世の鹿児島藩に大きな影響を及ぼした忠良が、歌った和歌として、
魔のしょいか 天眼おがみ 法華しう 一かふしうに すきのこざしき
との一首があります。
すなわち天眼おがみ(キリスト教)、法華宗(日蓮宗)、一向宗(真宗)、すきのこざしき(茶道など風流事文化)は悪魔の行為であると言うのです。
ここに真宗も、島津忠良に嫌悪されているのです。
それではどうして真宗を嫌ったのか?この歌が掲載されているのは『日新菩薩記』という本です。
これは島津家中興の祖である島津忠良を顕彰した本ですが、ここでこの歌を紹介するにあたりその解説として
諸所に一向宗起って、父母を軽んじ、仏神に疎ずる者、人間の作法にあらず云々
とあり、真宗を厳しく批判しています。
ここに「一向宗起って」等とあり、一向一揆等といった事態を念頭において、真宗が嫌悪されていることを窺うことができます。