平成27年にNHKにて福岡放送局製作(12作目)の「福岡発地域ドラマ ここにある幸せ」が放映されました。
脚本は岡田惠和氏で、かつてNHK朝の連続ドラマ(朝ドラ)の「ちゅらさん」「おひさま」そして「ひよっこ」(平成29年)を執筆されました。
舞台は福津市津屋崎で、「ここにある幸せ」は私にとってとても印象深い作品の一つです。
ドラマのあらすじをNHKのホームページによりつつ紹介します。
「自分の人生には…、何もない…。」東京に暮らす主人公・立川浩幸(松田翔太)はつぶやいた。
過酷なノルマと人間関係に疲れ、仕事を辞めてしまい、その上、同棲中の恋人からは愛想をつかされ追い出される。
そんな折、浩幸は、小学生時代の級友との約束を思い出し、福岡の小さな港町・津屋崎を訪ねた。
そこで、級友の母親・花田福子から級友の病死を知らされる。
そして、明るくてお話し好きな福子に気に入られた浩幸は、港、干潟、山など、様々な思い出の場所へ連れ回されていく…。
そこでかつての恋愛話や苦労話など、山あり谷ありの半生を聞かされる。
福子は「禍福はあざなえる縄のごとし」「悲喜こもごも」の半生を懐かしみ、笑い飛ばしてしまう。
振り返れば、みんな大切な出来事で無駄なものはなかったとでも言うように…。
そして、浩幸は泣いたり笑ったりしながら自問する。
「生きるってなんだろう?」「なんで福子さんは幸せそうなんだろう?」「自分の居場所はどこにあるんだろう?」・・・だが浩幸は、いつの間にか前向きな力をもらっている自分に気づく。
このようにしてドラマは展開していきます。
私は思いました。
このドラマの心地よさは何だろうかと。
そして私なりに気付きました。
福子さんは、浩幸が抱える生活の行き詰まり感(突然、小学校時代の友達が訪ねてくることからしても推測できる)をそのまま受け止め、そのことには直接に触れない。
浩幸の「僕には何にもない・・空っぽ」とのつぶやきに対しても、教訓めいたアドバイスもしない。
ただ浩幸のそばに寄り添いながら、これまでの人生を認めてくれています。
「あなたはあなたでいいのよ。そのままで」と。~「ここにある幸せ」
「青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光 微妙香潔」(仏説阿弥陀経)
「青い花は青い光を 黄色い花は黄色い光を 赤い花は赤い光りを 白い花は白い光りを放ち その香りは気高く清らかである」そのような浄土の世界は、真実のありようを示しています。
多くのいのちに支えられながら咲く花は、まわりの花のいのちと比較することはなく、その花の光の輝きは、お互いを照らし合っているのです。
お互いを認め合い、輝きを増しているのです。
まさしく、過不足なく「ここにある幸せ」に目覚める時、「花びらごとに その色の光が輝く」世界が開けてきます。
しかしながら、現実の日暮らしはどうかというと、多くのいのちに支えられているにも関わらず、「隣の芝生は青い」ではありませんが、自己中心、比較相対の世界で自らを見失い、空虚感の中「自分の人生には何もない。空っぽ…。」と嘆いています。
そんな私に寄り添い「あなたはあなたで輝いていますよ。」と呼びかけてくださる仏さまがおられます。
そこに「私の居場所」があります。
わたしと小鳥と鈴と (金子みすゞ)
わたしが両手をひろげても お空はちっとも飛べないが
飛べる小鳥はわたしのように 地面(じべた)をはやくは走れない
わたしがからだをゆすっても きれいな音はでないけど
あの鳴る鈴はわたしのように たくさんなうたは知らないよ
鈴と小鳥と それからわたし みんなちがってみんないい