私の住んでいる市には、中学校や高校がいくつもあります。男子生徒はどこも似たような学生服を来ていることもあり、一見しただけではどこの学校なのか容易には分らないのですが、女子生徒はそれぞれ色やデザインが異なっているので、制服を見るとどこの中学校や高校だということがすぐに分りました。
ところが、だんだんこれまで見たことのない制服を着た女子生徒を見かけるようになってきました。少子化で生徒数が減ってきたため、デザインを一新することで、生徒が学校に関心を持ったり、入学してからも意欲的に通学できるようにとの配慮から変更されたのかなと思ったりすることです。ただし、私の通っていた高校は、依然として私が在学していた頃と同じデザインの制服を着ているようです。
ところで、卒寿(数え年90歳)を過ぎ、ご高齢で歩けなくなったこともあり、最近はお寺から足が遠ざかっておられましたが、以前は仏教婦人会にも所属され、お参りや法要の場でよくお見かけしていた方が先日亡くなられ、その方の葬儀をお勤めするということがありました。一般に、生前に帰敬式を受けて、既に法名をお持ちの方の場合、葬儀社の方も打ち合わせの段階で法名の有無の確認してくださることもあり、ご遺族の方が「法名を持っていました」とお知らせくださることがあります。その場合は、当然その法名を位牌に記載します。
ところが、今回はそのような申し出がなかったのですが、「もしかすると帰敬式を受けておられたのではなかろうか」と思って、これまでに帰敬式を受けられた方の氏名・法名を控えているファイルを確認してみたのですが、その方の記録はありませんでした。そこで、一般に生前に法名をお持ちでなかった方の場合は、葬儀の際にこちらでつけているので、あれこれ考えてその方にふさわしいと思われる法名をつけて葬儀に臨みました。
そして、葬儀の読経を終えて退出する前に、喪主ご夫婦に挨拶をした時のことです。喪主の奥さんが、見覚えのある色・模様の門徒式章をかけておられることに気が付きました。それは、帰敬式を受けた方に対して、ご本山・西本願寺から贈られている門徒式章でした。
喪主の方とその奥さんのどちらか帰敬式を受けたという記録はなかったので、「やはり(亡くなられ方は)帰敬式を受けておられたのに違いない…」と思って、葬儀から帰って改めて調べてみました。すると、記録簿とは別に封筒の中から平成元年に受式された方の氏名・法名を記録した葉書が出てきて、その中の一枚にありました。
既に葬儀では、今回考えた法名を位牌に記載し表白などを読み上げていたのですが、火葬から帰って来られた後の還骨法要をお勤めする前に、葬儀が終わったとき喪主の奥さんが帰敬式の受式者に贈られる門徒式章をかけておられたことに気が付き、帰って調べたら法名が出てきたので、位牌を書き改めてきたこと、さらによくぞその門徒式章をかけてくださいましたというようなことを手短に話しました。
すると、ご夫婦共に大変喜んでくださいました。そして、還骨法要が終わってご夫婦に挨拶をすると、法要の前まで喪主の方は寺号のはいった門徒式章をかけておられたのですが、「そういうご縁のある式章なら、長男である自分が受け継ぐべきだ」と思われたのか、奥さんがかけておられた帰敬式の受式者に贈られる門徒式章の方をかけておられました。
学校の制服が、その時代に合わせてデザインを一新するように、もし帰敬式の受式者に贈られる門徒式章の色や模様が頻繁に変わっていたら、きっと今回「法名をお持ちだ」と確信して、改めて調べることはなかったと思います。
もちろん「一度定めたものは決して変えてはならない」などと言うつもりは毛頭ありませんが、30年以上も前から色同じ色・模様を継続してもらっていたことが、今回の「発見」に繋がったと思うと、「変わっていなくて良かった」と感謝せずにはおれませんでした。