一般に通達と言えば、役所などから回ってくる通知を指します。
隅々にまで行き渡るようにという意味でなづけられたのでしょうか。
この言葉は、もともと
「つうだつ」
と読む仏教語で、仏道に深く達しているという、仏の覚りを意味しています。
「覚り」
と聞くと、現実離れしたもののように思われるかもしれませんが、
「覚り」
とはさまざまな思い込みから解放された、物事や現実をしっかりと見通す智慧のことです。
私たちは、心のどこかで自分のものの見方や判断は間違っていないと思っています。
そのように思わないと、自信を持てず、行動に移せないのが人間の性分だからです。
ところが、自分は間違っていないという思い込みこそが、実は危いのです。
世の中のことは、全てわかったつもりになってしまっている、その自身の愚かさに気付くところに、現実を見通す眼を獲得できるのだと言えます。
このことを仏教は
「通達」
という言葉で教えているのです。