ケニアで環境副大臣をされているワンガリ・マータイさんという方がおられます。
マータイさんは、これまでに3000万本にのぼる植樹を行った「グリーンベルト運動」の創設者で、27年間にわたって植樹活動を続けてこられたことが評価を受けて、アフリカの女性で初めてノーベル賞を受賞されました。
またマータイさんは、現在テレビで流れている公共広告機構のCMでも目にする「3Rの精神」を推奨しておられます。
「3R」とは、リデュース(消費削減)、リユース(物資の再使用)、リサイクル(資源再利用)の3つの言葉の頭文字をとったものです。
これ以外にも、女性の地位向上、貧困の解消、平和確立などの活動で貢献し、2004年にノーベル平和賞を受賞されました。
このマータイさんが来日された際に、「もったいない」という言葉に感動され、『ぜひこの言葉を世界中に広めたい』と語られたことから、改めて私たちの中にこの言葉の意味が問い直されることになりました。
実は、この「もったいない」という言葉は、日本だけで使われる表現なのだそうです。
漢字で書くと「勿体ない」となりますが、「勿体」という言葉を辞書で調べると「ものものしい、尊大ぶること」と説明してあります。
そうすると「勿体」の後に「ない」と否定の言葉が添えられていますので、「勿体ない」とは「無駄にするのが惜しい、おそれおおい、申し訳ない」という意味になります。
「無駄にするのが惜しい」という意味が一般的に用いられていますので、マータイさんもこの意味において感動されたのだと思われます。
けれども、私はそれと同じか、あるいはそれ以上にこの言葉は「おそれおおい、申し訳ない」という意味で大切に受け止めたいと考えています。
確かに「3Rの精神」でものを大切にすることは、決して忘れてはならないことですが、「もったいない」という言葉が注目されたことを通して、この言葉が物語る、自分自身が多くの支えの中で生かされていることを知らされた時にわき上がる「おそれおおい、申し訳ない」と自然に頭の下がる生き方を見出していけたら…、と思います。