『人生は「あっ」という間だから』

よく知られているように、セミは夏に成虫となってからわずか二週間足らずの間に死んでしまいます。

夏に生まれて夏に死んでいくのですから、夏の専門家のようですが、実は夏しか知らないセミにはおそらく今が夏だということは分からないのではないでしょうか?

何故なら、春夏秋冬、一年の四季全てを知っているものだけが、今は夏だとか秋だとかを知り分けることが出来ると思われるからです。

そうすると、夏しか知らないセミにとっては、夏だけがその生涯の全てなのですから、夏を夏と知ることは不可能だといえます。

これと同じように、生まれ死にを繰り返す「流転」といわれるような迷いのいのちのただ中にあるものは、自分が送っていることに気付くことさえ簡単ではありません。

まず、迷いとは何かということを知らなければ、迷っていることにさえも気付き得ないからです。

ところで、あなたはいま何歳ですか? 子どもの頃、その年齢の人はずいぶんと「大人」に見えたのではありませんか? 気が付けば年齢だけが重なり「あっ」という間なここまで来たというのが実感かと思われます。

そのような人生をこのまま繰り返して終えますか? それとも…?