======ご講師紹介======
蓑毛良助さん(鹿児島国際大学大学院教授)
☆演題 「心と身体の健康のために」
ご講師は、鹿児島国際大学大学院教授・蓑毛良助さんです。
昭和24年生まれ。
昭和51年に東京教育大学(現筑波大学)大学院を卒業。
同年4月から講師として愛媛大学に勤務。
昭和58年から鹿児島県内の大学に勤務。
平成8年に、鹿児島国際大学福祉社会学部教授。
次いで平成13年に同大学大学院福祉社会研究科の教授に就任。
さまざまな役職を歴任しつつ現在に至る。
教育心理学、臨床心理学、障害児心理学を専門とし、スクールカウンセラーやDV相談員など、教育と心の問題に取り組んでおられます。
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人間の発達は
「オギャー」
とお母さんのお腹から出て始まると思われがちですが、最近の研究ではそうではないことが分かってきました。
胎児はお腹の中で1日約400?の羊水を飲み、それを肺に入れて呼吸の練習をしたり、食道から胃や腸、腎臓を通して濾過し、きれいに羊水を出して排泄の練習もしています。
また胎内で歩行の練習をするなど、胎児はお母さんのお腹の中で発達を初めているんです。
昔から胎教といって、お母さんの心の状態が良好だと胎児の情緒が安定していい影響を与え、逆の状態だと情緒が不安定になると言われてきました。
そのことが、科学的にも証明されてきたんです。
具体的には、胎内に録音できる機械を入れると、周囲の音がハッキリと録音されるんです。
妊娠6カ月あたりから胎児は周囲の音を認識し始めます。
例えば、ゆっくりした音楽を流すと胎児はリラックスしますが、反対に太鼓のような大きな音を鳴らしたり、夫婦げんかをしたりすると縮こまってしまいます。
ある女性の例です。
その女性は、赤ちゃんがお腹にいる時に夫から暴力を受けたんですが、その後生まれた赤ちゃんが育って、思春期を迎えた時に、そのお母さんをたたいてしまったんです。
その時の姿が、暴力をふるった夫の姿にそっくりだったといいます。
夫とはその子が赤ちゃんの間に離婚していましたので、暴力を受けているところを直接見た訳ではないんですが、胎児の時に何か暴力的なものを感じたのかもしれません。
このように、実は妊娠した時から子どもの発達は始まっているんです。
人間は生まれてくると、お母さんを中心に周りの人のお世話を受けながら育っていきます。
人間は生まれて歩くまでに1年、話せるようになめまで2年はかかります。
馬のように生まれて数時間では歩けません。
人間は、生理的早産といって、未完成のまま生まれてくるんです。
未完成ですから、周りの人が一生懸命育てなければ一人前になりません。
人生の最初で一番大事なのは無条件の愛情なんです。
愛情を注がれた子どもは、非常に積極的に行動しますので、発達がどんどん進んで行きます。
それに対して、暴力や育児放棄といった虐待を受け、十分な愛情が与えられなかった子どもは、指しゃぶりをしたり、幼稚園に行けなくなったりするなど、様々な心と身体の病気が出てきます。
日本では、親が子を育てられない場合、児童養護施設で育ちますが、その中には里親に育てられる子もいれば、裁判所で養子縁組をする人もいます。
児童養護施設で育てられたある子どもは、
『ひとすじの光』
という詩の中に
「どこで生まれても、誰から生まれても、人は皆同じ。
だから生きていこう」
と書いています。
生まれてくる子どもは、家庭環境を選べません。
だから、親の責任はそれだけ重いんです。
幼い頃に愛情を注いであげなければ、子どもは孤独を感じ、傷つき、悪い方向へ足を踏み入れてしまいます。
親に迷惑をかけたりするのは嫌いだからではなく、大好きだけど素直に気持ちを伝えられないからなんです。
一番大事なことは、愛情を注いでゆっくり話をすることなのではないでしょうか。