ある時お釈迦さまは、自らの爪で地面からわずかな土をすくいあげて、お弟子に尋ねられました。
「私の爪の先の土と大地の土とはどちらが多いと思うか」。
するとお弟子は「爪の先の土はごくわずかで大地の土の方が比べものにならないくらい多いです」と答えました。
お釈迦さまは「そうであろう。
実はこの世の中に人として生まれてくることは、これ程わずかばかりのことでしかない。
だから人は欲望のままに生きて行くのではなく、正しい道を求めて生きていかなければならないのだ」とお話になられたと伝えられています。
もとすれば私達は、人に生まれたことを「当たり前」と考えてしまいがちです。
けれども、よくよく考えてみますと、数えきれないような多くの命がある中で、人としての命を頂いたことはとても貴重なご縁であり、決して当たり前のことではありません。
しかもこの尊い命は、仏さまから正しい道を歩むように願われた命です。
それだけでも不思議なご縁なのに、私達はそのみ教えにも既に出会わせて頂いています。
このご縁を大切に、確かな拠りどころがある喜びのもとに日々過ごさせていただきたいものです。