真っ暗な縁を、住蓮は先に立って行く。 「どこへ」 安楽房が、…
松虫と、鈴虫―― ことばは慄(ふる)えがちだし、胸にいっぱい…
二尺ほど開けた戸の隙から、霰(あられ)を持って山風がふきこん…
法勝寺の山荘は閉まっていた。 昼は、信徒の参詣や、山と町の往…
五ツ衣(ぎぬ)の裳(すそ)をたかく紐でくくり上げて、白い素足…
上皇が熊野へ行幸(みゆき)のあいだは、御所のお留守の者ばかり…