「念仏のうちに千の風」―いのちの尊さ・医学・仏教音楽からー(中旬) 「千の風」は大切な人からのメッセージ

 人生には誰しも「死」が必然なこととしてあります。

四十歳の若さでガンで亡くなった人がいました。

周囲の人は「とても残念だ」と言いましたが、亡くなった本人は

「私は全然悲しくないよ。

今までの人生はとても充実していました。

やりたいことはまだあるけれども、満足しています。

疲れて皆さんより先に往生するけど大丈夫だよ」

と笑顔で話して、死を迎えていきました。

 反対に、百歳まで生きても人生は辛いと感じ、不平不満の毎日を過ごす人もいます。

どちらが幸せとは言い切れません。

やはり人生とは不思議なものですね。

でも、一つだけ変わらないものがあります。

それは、どんな人生でも、心に響き、感動することが必ずあるということです。

 私は、このたび招かれた『ハートフル大学』で、皆さんが卒業式を迎えられることに感動を覚えました。

毎日どんな勉強をしているのか知りたいと思いました。

きっと学びの中から、それぞれの人生を充実させておられることでしょう。

 仏さまの教えでは、人間は欲望、煩悩から離れなければならないでしょう。

でも、煩悩は欲しいものや言いたいことを我慢して、表面上は克服した気になっても、心の中にどんどんわいてきます。

何か食べたら、もっと美味しいものをもっとたくさん食べたいと思ってしまいます。

足りることを知らない欲望は、無限です。

でも、この欲望を少し抑えたら、きっと幸せな、満足できる人生になると思います。

だから、自分の欲がどのくらいなのかを正しく知るために、飾ることなく自分を深く見つめて、仏さまの光明に照らされ、自分を学んでいくことが大切なんですね。

桜島を見て、私はおばあちゃんを思い出しました。

以前、おばあちゃんに日本の美しい桜を見てもらうことを約束していましたが、残念ながら昨年の十一月に九十三歳で亡くなりました。

おばあちゃんの葬儀の日はちょうどコンサートが入っており、帰ることが出来ませんでした。

私はコンサートで涙を流しながら「千の風」を弾きました。

おばあちゃんの姿、笑顔が目に浮かびました。

 この曲は大切な人からのメッセージです。

「元気でいないといけないよ。

私のいのちは大自然のいのち、仏さまのいのちとなって、千の風にように大きい空に吹き渡っています。

あなたが寂しい時は私も寂しい。

あなたが悲しい時は私も悲しい。

あなたが辛い時は私も辛い。

あなたが幸せな時が私は一番うれしい。

私と会いたいときには目を閉じて、手を合わせて南無阿弥陀仏と称えれば、いつでもあなたのそばにいます」

というおばあちゃんからのメッセージなんだと私は思いました。