「老いに向き合いともに生きる」(中旬)その人にとっての「ちょうどいい」

介護用品はとても高価な物ですが、100円ショップで手に入るような身近な物でも十分介護に使えます。

例えば、いろんな種類のストローをリハビリに使ったり、ビールケースとお風呂マットを組み合わせて浴槽と同じ高さのイスを作り、イスに座った体勢のまま安全にお風呂に入ってもらったりします。

他にも人によって異なる

「立つのにちょうどいい位置」

ら手すりを付けるなど、あらゆる物を活用して、その人にとっての

「ちょうどいい」

を作っています。

年間通して必死に取り組んでいるのは水分補給です。

実は脱水症状からせん妄の症状が現れる人が非常に多いんです。

それで病院に行ったら認知症などと診断され、薬を飲まされていく内に本当の病気になってしまうという話をよく聞きます。

だから、そうならないよう、水分補給を徹底しています。

分量は1日2リットルを目標としていますが、それは大変なことなので、1人ずつ好みの飲み物を探っていきながら、コーラやサイダー、お茶やコーヒーなど、常に10種類以上の飲み物を準備して、手を変え品を変えながら飲んでもらっています。

物心ついたときから

「いろ葉」

にいる子ども達は、実のお孫さんでも近づけないようなお年寄りにもごく自然に近寄っていきます。

お年寄りも子どもを見ると元気になります。

中には子どもを叱る人もいるんですが、子どもは逆にそういうところからいろんなことを学んで成長していきます。

だから1日に3回くらい子どもの力を借りる時もあります。

一緒に本を読むような何気ない日常の光景にはホッとさせられますね。

スタッフは、ご飯を作りながら別のことをするというように、

「ながら仕事」

ができないと介護が務まりません。

これだけをしておけばいいんだというのではなく、洗濯しながら別の何かをする。

この人を気にしながら、別の人の世話をするというようなことが重要になってきます。

ここで働くスタッフが最初にぶつかるのがこの壁ですね。

施設でよく

「徘徊」

という言葉を聞きますが、私たちはそういう言葉は使いません。

「畑に行く」

という人がいたら、ああ今日は畑の気分なんだなということで、一緒について行くんです。

でも、ただついていくだけではいけません。

出て行ったときの表情、言葉から、どこに行こうとしているのかをキャッチするように、さりげなく付き合っていくんです。

そうして要領を得ていくと、自宅に帰ると言って出ていった人について行くのに、最初は1時間かかっていたのが、5分くらいで対応して、お年寄りにも5分くらいで納得してもらって、戻ってこれるようになります。

そのため、

「いろ葉」

では、鍵はかけません。

鍵をかけるということは、その時点で自分たちから介護を放棄していることだと私たちは思っています。

でも、ちゃんと対応していけば、お年寄りが勝手に出ていくことはなくなるんですよ。

出る前に

「お世話になりました」

と言ったり、きれいに靴を揃えて行くなど、ちゃんとサインを出してくれるようになります。

ご飯の時間も決まっていません。

食べたい時がご飯の時間です。

お腹がすいたときに食べるのが一番美味しい食事ですからね。

朝3時が朝ご飯の人がいたら、その時間に合わせて、朝3時に炊きたてのご飯ができるようにしていました。