さつまの真宗禁教史5月(中期)

出水郷における一向宗徒の摘発―その2―

前回にひき続き「出水に於ける一向宗禁制史料」を意訳して一向宗徒探索の様子を見ていきます。

前述のように数百人もの一向宗徒が露顕しました。

しかしこれによって取締りを緩やかにすればまた残党は大勢潜伏するでしょう。

一向宗禁止は島津家第一の禁止事項であり、御憐憫によって自首した者は赦免し、その後露顕した時はその身は勿論のこと、親類・与中の者も一層厳しく処分するとの布達がありました。

わたくしたち取締りにあたる者にとっては有難いことです。

布達の主旨を下々の者に再三伝達しましたところ、一向宗の残党千七百余人が自首いたしました。

その件については役人が帳面の記録をもって報告いたしました。

ところで、この春、宗門御改衆が、一向宗徒は胸替(宗旨替)する旨の誓詞を提出するように指示されて、一応は治まり、役人も安堵しました。

しかしながら、一向宗徒は愚鈍であり分別もなく、しかも過半は数十年来の信者であり、ひととおりの胸替の誓詞を命令されても、その御憐悠をわきまえず、前非を悔い改めることもなく、近年一向宗徒はまた増加しています。

そのようを状況ですので、御地頭様が御憐悠の処置をなさっても無駄なようです。

出水は他国との境界の地であり、役人が参上した時取締りを厳しくするようにご指示下さい。

そうでなければ従前のように一向宗がさかんになると思います。

出水は遠境の地ですので取締りを命じられても色々と相違することもあるかと思いますので当方で吟味の様子を報告いたします。

(次回に続きます。)