先日、あるお宅にご法事で伺ったところ、仏花に聞くなどとともに千両が活けられていました。
それを見ながら「ああ、あとひと月ちょっとでお正月が来るのだな。その前に、あれもしなければ、これもしなければ」と、少し焦りのようなものを感じたことでした。
今年一年を振り返れば、さまざまなできごとが脳裏によみがえってきます。
うれしいこと楽しいこともありましたがあまり思わしくないこともありました。
「出会は人生を豊かにし、別れは人生を深くする」
という言葉がありますが、まさに人生とは「出会いと別れによって紡がれる物語」と言えるのではないでしょうか。
あなたは『忘れられないおくりもの(スーザン・バーレイ著)』という絵本をご存知ですか。
物語の内容は以下の通りです。
動物仲間たちから慕われているアナグマがいました。
アナグマは賢くて物知りで、みんなに頼りにされています。
しかし、そんなアナグマも年を重ねて老いていきます。
やがて、自らの死期を悟ったアナグマは、みんなに手紙を残して静かにこの世を去っていきました。
残された仲間たちは、深い悲しみに包まれます。
やがて深い雪に閉ざされた冬が去り、春が来て外に出られるようになると、仲間たちは集まってアナグマと自分とのそれぞれの思い出を語り合いました。
モグラは、はさみの上手な使い方を教わったことを。
カエルは、スケートを教わったことを。
キツネは、ネクタイの結び方を教わったことを。
ウサギの奥さんは料理を教わったことを。
こんな風に、アナグマは一人ひとりに別れた後も宝物になるような、お互い助け合えるような、そんな豊かな知恵や工夫を残してくれたのです。
そして、みんなでお礼を言うのでした。
「ありがとう、アナグマさん」と。
「愛別離苦(あいべつりく)」の教えの通り、私たちは出会った以上、どんなに愛する人とも、大切な人とね、いつかは別れていかなければなりません。
でも、それで終わりではないのです。
出会いの中で培われた豊かな時間は、残された人のその後の人生の時間の中で、ずっとその人を支え続けてくれるのです。
人は、失って初めてそのことの大切さや有り難さに気付くものですが、私たちは別れを通して「感謝」の深い意味を知るのかもしれません。