2021年7月法話 『今日もまた 幸福求めて四苦八苦』(前期)

人は、誰もがしあわせを求めて生きているといってもいいかと思います。できうるならば、人生が全て順調に進んで苦しみや悩みのない人生を送ることを望みますが、実際の生活を振り返ってみますと、思い通りにならないことの方が多いように思います。

お釈迦様さま生きていく中で避けることのできない根本的な4つの苦しみを四苦(生苦・老苦・病苦・死苦)とお示し下さいました。生苦(しょうく)とは、人として生まれた瞬間から苦しみが生じていることをいいます。老苦(ろうく)とは、老いることの苦しみであります。病苦(びょうく)とは病むことの苦しみであります。病気のなかに症状の軽いものから重いものまでありますが、縁がととのえば、どのような病気にかかっていくかもわからないのです。死苦(しく)とは死に対する苦しみであります。日本はかつてないほどの長寿社会にはなりましたが、それでもいつかは必ずいのち終わってゆかねばならない時が必ずやってくるのです。

さらに具体的な苦しみとして、愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦の四苦があります。愛別離苦(あいべつりく)とは、愛しいものとも、遅かれ早かれいつかは必ず別れていかなければならない苦しみのことです。怨憎会苦(おんぞうえく)とは、会いたくない人にも会っていかなければならない苦しみのことです。求不得苦(ぐふとっく)とは求めても得ることのできない苦しみのことです。五蘊盛苦(ごうんじょうく)はこれまでの7つを総括したもので、心と体そのものが苦しみの種であるということです。

前の四苦(生苦・老苦・病苦・死苦)に、後の四苦をあわせて四苦八苦というのです。前の四苦は、人間の生きものとして起こる苦しみであり、後の四苦は人間が人間であるために味わう苦しみのことです。

お釈迦様はこの四苦八苦を通して、「人生苦なり」ということを示されました。すなわち「思い通りにはいかない」と言われるのです。

日々の生活の中で、思い通りにならないことを思い通りにしようとしてもがき苦しんでいる自分自身を顧みながら、改めてお釈迦様のこの言葉をしっかりと心に留めながら、一日いちにち尊い日々の日暮らしを送らせていただければと思うことです。