楽しい時に笑顔が育ち 苦しい時に心がそだつ

仏教ではこの世界のことを「娑婆」と呼びます。これはsahā(サハー)という古いインドの言葉の音を漢字にあてて表記したもので、意味としては、忍土(ニンド)とか忍苦土(ニンクド)と訳され、この世界は「苦しみに耐えていく世界」と言う意味になります。人生は「苦」を離れることができないと言うことが、真理であると説かれています。

人は誰もが、辛いこと苦しいことよりも、楽しいこと嬉しいことが多い人生を望んでいるのではないでしょうか。しかし「幸せな人生を過ごしたい」と願う一方で、辛いことや悲しいことにもやっぱり出会っていかなければなりません。

人はみんな、生まれ、老い、病気をし、いのちを終えていくことから逃れることができません。そして、こうありたい、こうしたい、と願いながらも、それら全てが実現するような人生はどこにもありません。

仏教にたずねてみますと、嬉しいこと楽しいことはもちろん、辛いこと苦しいことも含めて人生に無駄なものは何一つないと教えてくれます。困難に出会って、育つものがあるとすればそれは何でしょう。困難に立ち向かう気持ちもそうでしょう、困難を受け入れる心もそうでしょう。立ち上がることのできないような大きな困難に出会った時、他者への共感が生まれてきたり、困難な状況の中でこそ見えてくるものもきっとあるのではないでしょうか。

私たちのご本尊、阿弥陀如来は、「あなたがどの様な縁に触れようとも、どの様な状況におかれたとしても、あなたを決して一人にはしません」と、はたらいてくださる仏様です。「楽しい時に笑顔が育ち 苦しい時に心がそだつ」とても素敵な言葉です。