「念仏の教えと現代」11月(中期)

 今まで苦心惨憺して、これで完全だと自分の準備したことが、ある瞬間にいとも簡単にそのすべてが一瞬にして砕け散ってしまうことがあります。

あるいは、自分が一心に調整して、これでよしと思っている自分の姿が、ある瞬間に不慮の事故で、とんでもない状態になってしまうこともあります。

そして、このようなことは、現代社会のいたるところで起こっています。

 いま、何が起こるかわからない。

情報化の時代と呼ばれているこの現代社会においても、やはり未来に対する不確かさは、同じ状態であるといえるのです。

結局、私たちはいかにいろいろなことに備えても、その準備した事柄が、どのような不幸に見舞われてダメになってしまうか、実のところそのようなことは誰にも分からないのです。

 結局、人間というのは、現在この瞬間においては、空間的に何が起こるのか、また未来という時間に何が起こるのか、全く分からない状態で、今ここに立っているとしか言いようがないのです。

 そうしますと、現代人の怖さ、現代人にとっての最大の弱点は何かということになるのですが、その前に強さは既に述べたように、国際的な舞台で活躍し、豊かで快適で楽しい生活を作り出して行くことです。

国際化と情報化と技術化を可能にして、より多くの正しい資料をより早く集めて、まっすぐに進んでいくことはとても得意なのです。

計画通りに事が運んでいくということにおいて、そこでは無類の強さを発揮できるのです。

けれどもその逆に、綿密にたてた計画が一瞬にして根底から駄目になった時、あるいは思いもかけない不慮の出来事が起こった時など、そのような事態の中では、非常に弱い面を見せてしまうことになるのではないかと思われます。