「念仏の教えと現代」1月(中期)

では、

「真実の宗教とはいったいどのような教えか」

ということになります。

世の中にはいろいろな教えがありますが、その中からどの教えが真実の教えかということを見極めるために、次のような三つの尺度を持つことが考えられます。

それは、宗教と道徳と科学という三つの尺度です。

第一は、宗教が究極的に求めていることは

「心の安らぎ」

だといえます。

したがって、その宗教の究極を突き詰めれば、人々に心の安らぎを説いているかどうかを見ることが一つの尺度となります。

次に、その安らぎを得るために、その人は果たして人間としての正しい行為をなしているかどうかを見ることが問題になります。

これが第二の道徳の尺度ということになるのですが、安らぎを得る一つ前の段階で、その安らぎの心が人間にとっての一番の根源だとすれば、その前にはたしてその安らぎの心が人間として正しい行為によって得られたかどうか、その行為性について考えるような見方を尺度にすることが求められます。

このようにして、人は安らぎを得て、正しい人生を送ることになるのですが、最後にその人生が人間の理性、科学的な思惟に矛盾しないかという見方をすることで、それが正しい宗教であるかどうかが最終的に分かるのだと言えます。

そこで、このような真実の宗教に出遇うことを前提にして、それで私たちにとって理想的な人生とはということについて考えてみたいと思います。

自分自身にとって、一番理想的な人生とは、迷信などに頼ったり振り回されたりすることなく、理性に基づいた幸福な生き方が自分の人生の中に実現している。

そしてその自分の人生が、人間としての正しさを失うことなく、しかもその奥には常に心の安らぎがある。

このように、心の安らぎ・正しい行為・理性的な生き方といった、三つの尺度がすべて適えられている人生が、私たちの理想的な人生だということになるのではないかと思われます。