======ご講師紹介======
大坪治彦さん(鹿児島大学教育学部教授)
☆ 演題 「ヒトの意識が編まれるとき」
大坪先生は、昭和五十八年に鹿児島大学教育学部心理学科に就職。
以来、教育心理学を専門に様々な研究を重ねてこられました。
「新生児の認知発達」「学校不適応児への臨床援助」「教育及び心理学におけるコンピュータ利用」「交通安全」を研究テーマとしておられます。
また、日本心理学会等にも所属され、多忙な日々をお過ごしです。
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みなさんと一緒に赤ちゃんことを考えてみたいと思います。
赤ちゃんのお話をするのは、たとえば少年非行の問題であるとか、いろんな子ども達をめぐる状況、これを「きずな」という言葉で考えたいからです。
そうすると、お父さんお母さんと赤ちゃんの関係、あるいはおじいちゃんおばあちゃんと赤ちゃんの関係、ここがある意味で「きずな」のスタートだと思うんですね。
こういうデータがあります。
「男性・子ども・女性の各呼びかけ声に対する新生児の反応」
というものですが、三十歳前後の男性の方、三歳過ぎの元気な男の子、そして二十歳代中頃の女性にお願いをしました。
すべて同じ言葉をテープに吹き込んでもらい、それを生まれたばっかりの赤ちゃんたちに聞かせます。
私たちは赤ちゃんの胸に心臓の鼓動を計る装置を付けて、赤ちゃんたちの心拍数を計りました。
この中で、正期産児というのは、およそ受胎から四十週して生まれてきた赤ちゃんで、それに対して早期産児と言われている赤ちゃんがいます。
みなさんも時々聞かれると思うのですが、
「八カ月で早産だったのよ」
とか言ったりしますね。
つまり、十月十日ではなくて、それよりも一カ月とか二カ月とか三カ月とか、早く世の中に生まれてきた赤ちゃんたち、その早期産の赤ちゃんたちを対象に私たちは研究をしています。
まぁ、正期産児も早期産児も似たような結果になったんですけど…。
実は、男性の声の時、赤ちゃんの心拍数が一番高くなったんです。
「おっ、男性の声で一番心拍数が上がっとるじゃないか」
と思われる方がおられるかもしれませんが、男性の声はほとんど役に立ってないんですね。
けれども若い女性の声では、赤ちゃんの心拍数がだんだんゆっくりになって、落ち着いてくるんです。
男性の大人の声に比べたら、子どもの男の子の声の方がまだ効果があるというような感じなんです。
どうも赤ちゃんは声のえり好みをしているみたいなんですね。
どんな声が好きかといいますと、女性の声が好きという言い方よりも、子どもの声を頭に入れると、少し高い声が好きということが言えるようです。
例えば、若いお母さんが赤ちゃんをあやしているとき、よく見ていてください。
センスのいいお母さんは、普段みなさんとしゃべっている声とは違う声で赤ちゃんと対話しています。