お通夜はどのように過ごすべきですか。

お通夜は近親者や知人が夜を通して、ご本尊前の遺体の側に集い故人を偲びつつ、如来さまの救いを味わう行事であります。

仏さまの教えをお説き下さったお釈迦さまの死は、出家者にとっても在家者にとっても大きな衝撃であったことは、お釈迦さまが頭北面西右脇のお姿で横たえておられる周りで出家者や在家者また動物・植物までもが悲しまれている様子が描かれている涅槃図を見てもその悲しみの深さ・衝撃の大きさを窺い知ることができます。

お釈迦さまの弟子で、一番長く側にいて、一番多く教えを聞いていたはずのアナン尊者であってもお釈迦様の死に接して大きな衝撃を受け、悲しみの涙に打ちひしがれたようです。そのアナン尊者に対して、アヌルダ尊者は、お釈迦さまの死はお釈迦さまがかねてより説かれている諸行無常の教えにかなった現実であると静かに受け止め、涙にくれるアナン尊者に対して、お釈迦さまからこれまで聞いてきた教えを夜を徹して説いたと伝えられています。ここにお釈迦さまの死を通して、無常の道理を改めて静かに厳粛に受け止め、お釈迦さまが今まで説いてこられた教えを聞かせていただく法縁の場が開かれたのです。

身近な方とのお別れを通して、遺されたものが、故人のこれまでの一生涯の人生を静かに偲び、そして故人との悲喜こもごもの様々な思い出に浸りながら、改めて生前の厚情に対して感謝の気持ちを表し、そして忙しい日頃の生活の中でなかなか真剣に考えようとはしない無常の道理を知らされる場であります。そしてその場はそれまで合掌するご縁のなかった方々にとっても仏法を聴聞する機会となるのです。

身近な方とのお別れは辛く悲しいご縁ではありますが、そのお別れの場は同時に我々自身が無常の道理を真摯に受け止め、仏法を聴聞する法縁の場であるということを改めてしっかりと受け止めさせていただきたいものです。