「生きててよかった」(下旬) 死ぬまでまなぶ

ノンフィクションライター ジェフリー・S・アイリッシュさん

私には決意したことがあります。

まず、今の内に周りの年配の友人たちから学ぶことです。

これは知識とか知恵とかはもちろんだけれど、それよりも生きる姿勢みたいなものを学びたいと思っています。

 その意味で、自分の中で見本になっている大事な人が一人います。

フジおばんって呼ばれてる人です。

フジおばんは九十六歳で一人暮らし。

風呂は外にある五右衛門風呂で、一人で沸かして入ってます。

もう七十年も前に自分の旦那さんを亡くして、それからずっと子どもたちを養いました。

 フジおばんはすべてのことについて感謝の気持ちで生きているような人です。

私はフジおばんより五十年程若いですけど、今からでも彼女のように感謝の気持ち中心に毎日を生きたいというのが私の決意の一つです。

 次に、相手の悪いところを探したりするんじゃなくて、何よりも相手のいいところを先に信じることです。

特にフジおばんは人の悪口とか、そういうことを絶対に言わない人ですし、田舎でも都会でも、私が出会ってきた人の中には、他人のことを悪く言うような会話に参加しない、そういう会話にもならない人たちがいました。

 そういう人に私もなりたいんです。

みんなになってほしいっていうよりも、自分がなりたいっていうことです。

ちなみに、フジおばんは私が外国の人だって気付いていないようです。

そういうのも、なんかすばらしい人だなって思うところです。

 あとの決意っていうのは、自分もコミニュティーになるだけ参加したいということです。

それは土喰にしても、川辺にしても、鹿児島にしても責任がとれるだけは自分がしたい。

先に自分で気付いて、自分が責任をとりたいということです。

それと学ぶことは続けたい。

死ぬまで学ぶ姿勢で生きたいですね。

 それから、文章を通して日本の田舎の良さを日本人にわかってもらって、また英字新聞とか雑誌とかそういうところでも、外国の人に田舎の良さを語り続けたいと思います。

それでこういうのは、みんなにこうあるべきだって言うんじゃなくて、自分に言い聞かせる、自分だけの決意なんです。

 皆さんに一つお願いというか提案があります。

若い世代に話をすることはとても大事だと思うけども、それでも本当に堂々と自分が正しいと思う暮らし方、生き方、自分が誇りに思える姿勢を、話よりも見本となって若い世代に見せてほしい。

私にとってのフジおばんみたいに。

 見本になる程効果的なものはないと思う。

もちろん、若い世代は心配だとか、若い世代は期待できないとか、若い世代にしか期待できないっていう考え方もあると思うけど、そういうことを考えたり語ったりする前に、自分たちの暮らし方、自然や周りの人に優しいこととか、そういうことで我々みんなが見本になれば一番いいと思います。