それが五人も十人も、あるいはクラス全部とか、人数が多ければ多いほど苦しみは大きいのに、無視している本人は
「十人でやってるんだから、私の罪は十分の一」
と勘違いしているんですね。
人を傷つける行為は、人数の多さに比例して、相手の心の傷が深くなり、罪も大きいということが子どもたちはわかっていませんでした。
それは大人が分かっていないということが、そのまま子どもに来ただけだったんです。
例えば
「お宅のお子さん、今学校でいじめしているみたいよ」
と言われると
「まさかうちの子だけじゃないでしょうね」
なんて、仲間がいると安心しちゃう親がいるんです。
そんな風に大人が勘違いしているので、子どもだって当然間違ったメッセージを受けています。
もうひとつ重大な大人の勘違いがあります。
子育てをした経験のある方は、子ども達に
「お友だちをいじめたり、傷つけてはダメだよ」
と言ったことがあると思います。
それはいいんですが、その先に
「でも、やられた時はやり返していいんだよ」
などと教えたりしていませんか。
特に男の子には
「やり返すくらいの強さが大切。それぐらいの強さがなかったら、これからの世の中、生きていけないぞ。強くなれ」
と求めている人もいるかもしれません。
本当にやり返すというのは正しい解決方法だと思いますか。
やり返すとき、ポイントとなるのは思い切りということです。
思い切りやり返しますと、相手は驚いて怖くなって、二度といじめ返したりはしません。
この場合、自分は守られます。
自分さえよければ、他人のことはどうでもいいという人は、思い切りやり返すんですね。
ところが、やり返された人は、その悔しさや悲しさが、心の中に争いの種となって残ってしまいます。
その争いの種は、時間と共に大きく育って、いつどこでどんな形で大爆発するかわかりません。
そして、いじめの連鎖は起きてしまいます。
一方では、こんなこともあります。
ある子がいじめられていました。
大人から「やり返していい」と教えられていたのでやり返しました。
ところが、やり返された方も、大人から同じことを教わっていたので、仲間を一人連れてやり返してきました。
そして人数を増やして、またやり返す。
やられたらやり返すのは正しいことだというメッセージを子どもたちに伝えていたら、果たしてこのケンカはどうなるでしょうか。
やり返すことで問題は本当に解決するでしょうか。
この問いには大人も子どもも一瞬で答えを見つけてくれます。
私そさりよりも、人間にしかない言葉という宝を使って、心からの謝罪の気持ちを相手の心に届けたり、誤解を解いたりして、問題が一番小さいときに解決出来ると思っています。
そういうことを子どもたちに伝えてみてはいかがでしょうか。
そして、自分が体験して辛かったこと、嫌だったこと、悲しかったことは他のお友だちにしてはいけない、やり残してはいけないというこの二つのポイントを子どもに伝えたら、いじめはすごく減ると思います。