「旅ごころ、絵ごころ」(上旬)国を動かして時代劇を作る運動

======ご講師紹介======

榎木孝明さん(俳優・水彩画家)
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私は今年の年明けから『時代劇再生運動』を始め、時代劇の普及に取り組んでています。

この運動を始めた背景には、現代では時代劇で視聴率を取るのが難しく、スポンサーがつかなくなり、昨年民放から時代劇が無くなってしまったからです。

時代劇にはさまざまな役割を担い、陰で支えている方々がいらっしゃいますが、時代劇がなくなってしまえば、その方々の技術が継承されなくなってしまいます。

結髪さんや衣装さんの技術というのは何十年もかかって継承されるもので、時代劇がなくなればそれらは継承されなくなってしまいます。

私は

「果たしてこれでいいのかな」

と考えたんです。

実は、時代劇の中には、日本人の素晴らしい精神性が数多く散りばめられていて、私の育った昭和30年代のことを思い出します。

その時代は同じ集落の人に叱られていましたし、父親にもぶん殴られていました。

当時は、こっちが悪いことしたから当然だと思っていましたが、今の時代に教育でそれをしたら大問題ですよね。

親が子どもを本気で叱れなくなった、残念な時代だと思います。

あと、私は昔からとってもおばあちゃん子だったので、よく覚えている言葉がいくつかあるんですね。

中でも印象深いのが

「悪こっぼはすんなよ。お天道さんが、ちゃんと見ちょっど」

という言葉です。

当然のごとく、悪いことをしたらお天道さまが見ているというのは言われていました。

ですから、小さい頃からその心がすり込まれているんですよ。

「誰も見ていなくても、絶対に悪いことをしちゃいけない。仏さまが見ている」

それで、自分自身を律していたんです。

それも現代ではあまり言われなくなりましたが、実は時代劇だと、台詞の中でそういうことがいっぱい出せるんです。

だから、昔大切にしていた思いをちゃんと表現して、わかりやすく感動できる時代劇を、今こそもっといっぱい作らなきゃいけない。

時代劇は絶対になくしてはいけないと思い、この運動を始めたんです。

じゃあ何をしたらいいかと言うと、私は国を動かして映画作りをしようと考えました。

お隣の韓国は、映画作りがすごい。

NHKやBSでも韓国の時代劇を放送しています。

これは国策で、国が予算を出して作らせているんです。

これによって韓国のイメージがアップし、結果的に工業製品が売れるところにつながっています。

日本でもそれをやれば、きっと長い目で見ると、いろんなものが活性化するんじゃないでしょうか。

また、私が心配しているのは、日本に時代劇がないせいで韓国の時代劇ばかりを見て、日本の歴史を知らない若者が、韓国のドラマに影響されて文化がごっちゃになってしまうのではないかということです。

そういう意味で、日本も韓国に負けないような発想を持って、映画作りをするなら、国がちゃんと動いてくれないとダメなんです。

そうでもしないと、伝統技術の継承もそうですし、一番大事な日本人が日本人であることの意味がどんどん失われてしまう気がします。

人間関係も希薄になってきていますし、報道されるさまざまな事件を見ていても本当にそう思います。

だからこそ、今この時代に、大事なことを次の世代に伝えていかなければいけないと考え、時代劇再生運動を始めたのです。