ある先生は、
「食べられなくなる、それはイコール人生の終末じゃないでしょうか。そこにあえて穴を開けて、人工的に栄養を与えて生かしていくことが本当に正しいのでしょうか。自然に亡くなっていくことを邪魔しない方がいいと思います」
と言われた方もおられます。
みなさんはどうでしょう。
自分自身が認知症や脳卒中で倒れて、何も食べられなくなったときに、胃に穴を開けて人工的に栄養を入れて、延命する道を選びますか。
これは一人ひとりの問題ですが、自分の意識がはっきりしているときに、そうなったらどうするかということを家族にしっかり伝えておいた方がいいのではないかと思います。
意思表示がなければ、家族は
「現代の医学で出来ることをして下さい」
と言うでしょう。
そうすると、医者は延命治療をするんです。
しかし、生前にしっかりと意思表示をしておけば、自然に人生の終末を迎えていきます。
医学部を卒業して医者として育ってきた私たちにとって、病院に来た患者さんがどんな方であれ、いのちを救う、助けようとするのは至上命題でした。
しかし、これだけ高齢社会が進んで、こういうケースが増えてくると、いかに
「死」
ということを迎えさせてあげるかについても、これからの医学の大事な分野だと思います。
そのためには、みなさん一人ひとりが意思表示をしていた方がいいと思うんです。
認知症は早期発見が大事です。
今は鹿児島市内の脳外科に
「物忘れ外来」
というものがあり、そういうところに行かれると診断をしてくれます。
先ず、こういった病院で診察してもらうということですね。
早期に薬物治療をして進行を少しでも遅らせば、非常によくなるケースもあります。
デイケア、デイサービス、リハビリなどに積極的に参加していただき、いろんな人との交流を図ることも大切です。
また、大きな声で1日に2〜3回笑ってください。
気持ちが沈んでいても、ただ単に大きな声で笑うとだんだん明るくなってきますよね。
あと、家族の方は家庭では笑顔で接してください。
そして、否定をしないことですね。
例えば、その人が
「そこに熊がいる」
と言っても、
「熊なんていないよ」
と否定しないことです。
「あ、熊がいるね。にぎやかでいいいね」
と言ってほしいんです。
その人には見えているので、否定されると怒りますが、同意すればそれで安心するんです。
それと、回想するということも大事だと言われています。
子ども時代や元気な頃の思い出話をすると、非常に穏やかになってくると言われています。
そして、相手の顔を見て怒らない。
こういったことが、認知症の方と接するときに大事なことです。