ご講師:東川隆太郎さん(NPO法人まちづくり地域フォーラムかごしま探検の会代表理事)
鹿児島といえば、温泉があり、火山があり、観光地もたくさんあって、食べ物も安くて美味しい、とてもよい所です。
でも、それだけでない世界が広がっているように私には思えます。
今日ご紹介する『世間遺産』は、みなさんの生活空間とか、お住まいになっている地域なんかの身近なものが含まれています。
「あれならおいもしっちょっど(あれなら、私も知っていますよ)」
というのも出てくるかもしれません。
でも、そこに意味や価値があると思うんですね。
新しい鹿児島の遊び方の選択肢。
鹿児島にはまだまだこんなにも魅力が、見どころがたくさんあるんですよ。
みなさんの地域には、こんなにも宝物があるんですよ。
そんなお話をさせて頂きたいと思います。
私は
「かごしま探検の会」
というNPO法人の代表をさせて頂いております。
12年前、私は
「鹿児島丸ごと博物館」
というのを作りたいと思っていました。
それは、新しい建物を造るということではなく、見立てなんですよ。
自分たちの地域、自分たちの校区、自分たちの町内会、自分たちのシマ、それを1つの博物館に見立てましょう。
屋根のない博物館。
こういう状況を造って、遊びの場、学びの場を広げていこうといういうのが、かごしま探検の会を立ち上げたときに考えていたことなんですね。
従来の博物館の場合、まず建物があります。
その建物の中には昔の人が使っていた道具だとか、古文書、そういう収集品が並んでいます。
そしてもう1つ、それらを管理する学芸員や専門家がいます。
ところが、地域丸ごと博物館には建物はありません。
その役割を果たすのは町内会や校区といった
「領域」
になります。
その場合、領域は関わる人によって大きくもなり、小さくもなり、自由自在なんですよ。
そして、収集品と同じ役割をするのが、その領域の中に点在する遺産ということになる訳です。
例えば、神社やお寺といった、いろんな
「文化財」がありますね。
そして、川・山・湖などのきれいな
「風景」も含まれます。
さらには「記憶」です。
それぞれの地域には、長年その地に住まわれ、昔のことをよく知っておられる高齢の方がたくさんいらっしゃいます。
そういう方々が覚えておられるる知恵や知識、または昔の民謡、言葉、言い伝えなど、それらの記憶はまさに宝物なんです。
記憶や歌というのは目に見える物ではありません。
でも、これを拾い集めて記憶したり、あるいは話にすることによって伝わるんですよね。
それも、私は地域の大事な宝物だと思っています。
特に、この「記憶」はたくさんあります。
この活動を始めたとき、それぞれの地域のみなさんは
「うちの地域には何もなかよ、隣の地域に行きやんせ(私の地域には何もありませんよ、隣の地域に行ってください)」
と言われました。
でも、どこの地域にもいろんな歴史があります。
例えば、田んぼがあり、川があります。
川には名前がついていますよね。
なんでその名前になったのかという由来こそがまさに、宝物なんですよ。
田んぼにしても、今までその田んぼをずっと作ってこられた先祖の方がいらっしゃいます。
それらを作られた先人の方、そういう話も実は大事だったりするんですね。
そういう遺産記憶をたくさん見つけてくる。
それがまさに
「世間遺産」と呼んでいるものの1つなんですね。