その「地域まるこど博物館」を作るのには、重要なことがいくつかあります。
まず、自分たちの地域に良いものがたくさんあると気付くことが大事です。
今や形骸化しつつあるいろんな方言や言い伝え、郷土料理などがそうです。
そして、気付くだけでなく、それらを守り、地域の中に残していくために子や孫といった次世代に受け継いでいかなければなりません。
そして、自分の地域にあるものの魅力に気付かせる魅せ方も必要です。
それから伝える人、話し手がそれぞれの地域にいてくれたら嬉しいですね。
私もいろんな地域に行かせていただいておりますが、その地域に伝わるいろんな話を伝えてくださる観光ガイドの方を育成するというのが私の仕事の1つになっています。
自分たちの地域にはもっともっと、こんなにもいいものがあるんだという気付きの場を広げて、そしてみなさんに気付いていただく。
その手法として、私はこの
「世間遺産」を提唱し、いろんな人たちの目に触れるよう南日本新聞で連載させていただいたんです。
これが「世間遺産」の大きな始まりでした。
では「世間遺産」とは何でしょうか。
広く認知されているものに世界遺産がありますが、それと同じように、
「世間遺産」にもいろんな価値基準を設けています。
ある意味、その基準のどれか1つでも満たせば、それで
「世間遺産」に認定していいと思います。
まず1つめはやはり
「希少価値」です。
次に
「体系的な価値」というのがあります。
例えば、ある
「世間遺産」を認定したとき、同類の物に注目が集まったとします。
これは、普段なら全く注目が集まらないものが、他の価値あるものとの関連性から、その面白さに気付くことができたという価値のことです。
それから
「時代的な価値」です。
昭和60年代、昭和30年代、そして明治・大正、それぞれの時代を象徴するような建物や、それを伝えるものがあると思います。
それぞれの時代を背景にしたような遺産というものにも注目しています。
それから
「貢献的な価値」。
これはどういうことかといいますと、私が認定することによって、地域の人たちに
「うちの地域にもそんなものがあったんだ」
と気付いていただき、それが地域の活力になるということです。
そういう貢献度が高そうなものも
「世間遺産」として認定しています。
それから
「美的な価値」も外せません。
さらに
「心象的な価値」ですね。
地域の人たちの思い入れがものすごくこもっている。
これを認定することによって、地域の人たちが、その思いを振り返る場を作る。
その心象的な価値というものも私は大事にしています。