ご講師:河野 義行さん(松本サリン事件被害者)
今を生きるとはどういうことなのか、それは過去にとらわれないということです。
反省しても努力しても、変えることができないことがあります。
それならもうそれにとらわれる必要はないのです。
将来への不安、心配、これもいりません。
大事なのは今をどうやって精一杯生きるかということです。
寿命が延びて、平均では何年とデータは出ていても、その人がいつまで生きられるか誰にも分かりません。
明日の保障もない訳ですから来年の心配をする必要があるのか、そんな発想です。
今できること、今やりたいことをやる、それが大事だと私は思っています。
私は学生時代から、自分の人生は自分のものなのだから、世間体などにとらわれたくないと考えていました。
昭和51年に結婚しましたが、当時としてはまだ珍しい二人だけの結婚式をしました。
うちの親も妻の両親も大反対でした。
けれども、私は自分の人生だから自分の好きなようにして、自分が責任をとる。
そういう意味で親の援助は一切いらないと思い、軽井沢の教会で結婚式を行いました。
家族計画も立て、3人の子どもをもうけ、子どもは高校に入学する頃には親から切り離した生活をしてもらいたい、逆にそれまでは親の思い出をいっぱい作ってあげたいと考えました。
私は会社に勤めておりましたが、毎年夏休みには2週間休暇を取って、自給自足のようなキャンプ旅行に出かけ、短い連休でも小さなキャンプに出かけたりしました。
そして、子どもが自立したらまた夫婦でゆっくり遊ぼうと考えていました。
後年、長男の子育てにおいて問題が出たとき会社を辞めました。
当時私は長野県上田市に単身赴任中で、会社に異動を願い出ましたが、実現しなかったからです。
この時は何よりも長男のことを最優先しました。
私が寄り添うと長男の生活態度が変わり勉学にも励むようになって、無事に高校に入学することができました。
松本サリン事件が起こった年のことです。