旅せよ鹿児島人~薩摩スチューデントからのメッセージ~(後期)旅が人を強くする、真実を見る目を養う

日本のパスポートで、ビザなしあるいは到着ビザで滞在できる国が現在170ケ国あります。

約170ケ国に自由に旅ができるのが皆さんがお持ちのパスポートで、世界でも3~4番目に強いパスポートだと言われています。

好きな国に自由に旅することができる特権を私たちは持っています。

しかし、日本人のパスポート所有率はまだ24パーセントと先進国の中では特に低く、イギリス人やオーストラリア人の所有率70パーセントとは大きな隔たりがあります。

また、鹿児島県民のパスポート所有率はというと約11パーセント。

常に全国最下位レベルです。

青森、秋田、高知ともに全国ワーストを占めています。

パスポートを持っていないことを責める気はありませんが、私が皆さんにお願いしたいのは、せめて子どもたちや、若い人に旅をさせてもらいたいというのが本旨でございます。

幕末の薩摩スチューデントの例が顕著ですが、旅が人間を強くすると私は確信しております。

私自身も大学入学後すぐに休学届を出して、自転車で1年半の旅に出ました。

雨、坂、パンク、のぼり坂という自転車の四重苦も経験しながら、自分の目で現実を見て、人の情けのありがたさも実感しました。

旅をしないと何も分からない。

旅をすることで、真実を見る目が養われる。

旅をすることによって、打ちのめされ、それを乗り越えていくことで人は強くなります。

薩摩スチューデントについては、鹿児島中央駅前に、「若き薩摩の群像」というモニュメントが建てられています。

皆さんもご覧になっておられると思いますが、実はあのモニュメントには渡英した19人のうち、薩摩藩出身の17人しか顕彰されていないのです。

藩外出身の2名は除外されているのです。

薩摩藩留学生記念館では、ここから命がけで旅立っていって、諸国を見て回って、それを日本に持ち帰って、新しい日本を作ろうと努力した人たちの努力をちゃんと次世代に伝えるために作るという主旨で、19名全員のレリーフを作成して展示してあります。

しっかり作りたいと思いました。

そしてもうひとつのコンセプトは旅をしなさい。

自分の目で学び、自分の足で歩いて、身体で感じて判断する子にならないとその国は遅れてしまう。

このことを薩摩スチューデントは身をもって教えてくれていると思います。

私は自分自身で旅をして、そして、人から旅をする機会を与えていただいて、その成果としてこういう博物館などを造ることができました。

皆さんの周りに若い方がいたら、ぜひ旅をさせてあげてください。

皆さんも旅をしませんか。

そんなに遠くまで行かなくてもいいのです。

国内の旅も大事です。

明日一歩踏み出すところから人生は広がっていくのではないでしょうか。

皆さん、よい旅を。