仏教から生まれた華「雅楽」を楽しみませんか(後期)可能性を秘めた古くて新しい音楽

近年、私はいろんなジャンルの方や世界中の最先端の音楽家たちとコラボレーションして演奏する機会が増えています。

雅楽の拍子の取り方は日本独特で、他の邦楽のジャンルとも異なります。

琴や三味線、尺八などのリズムやテンポとはまったく別ですし、どういうシステムで大勢の人数が集まって演奏しているのかと興味を持つ人が多いようです。

私たちの世界では、ぴったり合うということは必ずしも気持ちの良いことではありません。

日本人にはそういう独特の感覚があるようで、音程を微妙にずらしたり、タイミングをそらしたりしてパフォーマンスを試みます。

中心線をずらすことは美術の世界でもよく用いる手法です。

神社の狛犬(こまいぬ)が好例です。

他の国では左右対称同じ顔の犬や獅子が並んでいますが、日本は「阿吽(あうん)の呼吸」といって右の狛犬と左の狛犬の顔が異なります。

左右同じものを並べるとなぜかしっくりこないというのが日本人の感覚です。

このような感覚を生かしながら雅楽は表現されます。

その感覚が現代音楽にとって特に価値あるものと評価されています。

先進的な感覚を備えているということで、いろいろなヒントを得るために雅楽に興味を持たれる方が多いようです。

私は今、作曲に取り組んでいますが、最先端の音楽家が行っていることが、雅楽で既に行われていた演奏法であると気づくことがあります。

古来のものが古来の価値をとどめながら、新しいものを生み出す源にもなっています。

それが日本の雅楽なのではないかと思っております。