2019年3月法話 『花は咲く縁が集まって咲く』(後期)

もう今では来なくなってしまいましたが、

以前は、境内にある

鹿児島市の保存樹にもなっている

樹齢150年のホルトノキ(樹高12m) に、

毎年、アオバズクという

フクロウの仲間で30cmくらいの小型の鳥が

つがいで毎年南の国からやってきて、

子どもを産み育て、また南の方に帰っていくことが

ずっと繰り返されていました。

近所の方々はもちろん、

遠くからもこのアオバズクを観察に来る人もいましたし、

幼稚園の子どもたちも、

アオバズクが来ることを楽しみにしていました。

ある年の年長組さんはアオバズクが来る前から

いろんなことを調べたり、作品を作ったりして

心待ちにしていました。

中には、ほーっほーっと

アオバズクの鳴き声と飛ぶ姿まで真似する子もいました。

そして、5月の連休明けのころ

ついにアオバズクがやってきました。

子どもたちは大喜びです。

アオバズクが巣を作る木の室は木の中腹にあります。

園児の目から見ると、はるかに上にあるアオバズクの巣見上げて

早く子どもが生まれて大きくなったらいいなあと話していました。

そんなある日、

アオバズク観察の活動の一つとして

境内にある4階建ての納骨堂の屋上に登って

アオバズクがいるホルトノキを見てみました。

今までは下から見上げてばかりいた子どもたちでしたが

今回は、はるか下に小さく見えるホルトノキを

子どもたちが見下ろしたのです。

子どもたちは歓声を上げました。

「ホルトノキちっちゃい!」

「手に取れそう!」と、ホルトノキをつかむように手をのばす子もいました。

そして子どもたちの中にこんな会話が生まれていました。

「こんな小さな木によく帰って来るよね!」

「誰が教えてくれるのかなあ」

「アオバズクさんって、すごいよね!」

「すごいすごい!!」

下から見上げていた時には大きかった木。

その時には思えなかったけれども

一度自分がその木を見下ろした時に

こんなに小さな木を目指して

遠い南の国から毎年必ず帰ってくることに

子どもたちは、いのちのすごさや大きさを実感したのでした。

アオバズクも南の国に帰り

一学期が終わるころには、

子どもたちの活動は、先生たちに助けられながら、

とっても大きなものに展開していました。

アオバズクさんが帰ってくるのは、この境内の自然や周りの自然があるから。

そして、アオバズクさんの生きる糧となる虫たちや川の生き物などのいてくれるから。

邪魔しないで温かく見守ってくれる私たちがいるから。

こういうたくさんの力(ご縁)があって

アオバズクさんは帰ってきて子どもを育てることができる(花は咲く)ことを

子どもたちなりに受け止めていました。

そして、それはアオバズクさんだけではなく、

私たち一人ひとりのいのちもそうであることも。

一学期の終わりに、そんな子どもたちとの思いをくみ取って

先生たちもみんな協力して、

広い遊戯室いっぱい使って、

アオバズクさんが帰ってくる境内の環境をジオラマにして作り上げました。

あの自分たちが、いのちのすごさを感じた

納骨堂4階からの、木を見下ろした視点のままに。

終業式の日、その完成させたジオラマを見せるために

役割分担迄までして保護者さんを招待し、

自分たちの思いを伝えた子どもたちの姿はとても誇らしそうでした。

今ではいろんな環境の変化から

アオバズクは来なくなってしまいました。

でも、あの時に、5.6歳の幼い子どもたちが

目を輝かせて、語り合い、工夫して学んでいった姿は

うれしい思い出として私の心に残っています。