2019年11月法話 『報恩 ご恩を無駄にしないこと』(前期)

みなさんは生活の中でどんな時に『恩』を感じますか。私たちは生きていく中ではたくさんのご恩をいただきながら過ごしています。親からの恩、先生(師)からの恩、友達からの恩、いろんなご恩があります。そういったご恩を大切にしながら毎日を元気におすごしいただけたらと思うところです。

私が大学の時の先生にこういった言葉を教えてくださった先生がいました。『ご恩は返すのではなく、無駄にしないことが大切です。』恩返しという言葉がありますが、うけた恩を返すのではなく、無駄にしない、目から鱗がこぼれるように忘れることのできない言葉となりました。時々、自分に問いかけます。自分はいろんなひとにうけてきた『恩』をどのようにうけとめているだろうか、無駄にしていないだろうか。

生活のなかで、手をあわせること(おまいりやいただきますの食事の挨拶)がありますが、わたしがいまこうして手をあわせることができるのも、たくさんのお支えや導きがあるからこそであり、こうして手をあわす瞬間にたどりつくことができたのもたくさんのひとが助けてくれたからこそだ、と感じます。もしこのように手をあわせる瞬間がなければご恩に気づくこともないままにすぎさってしまったかもしれない、大切にしていこうと思えるのです。

わたしたちは食事のさいにこういった挨拶をします。『多くのいのちと皆さまのおかげによりこのごちそうを恵まれました、深くご恩をよろこび、ありがたくいただきます。』なぜこういった食事のあいさつがあるかというと、いま目の前でこれからいただく食事は決してあたりまえのようにいただけるものではなく、わたしひとりを生かすためにそのいのちをささげてくれているものである。

それは決してわたしたちにささげるためにあった『いのち』だけではないということです。そんないのちをいただいている私たちだからこそ、懸命に生きて、かけがえのないいのちをすごしていく、悔いのないいのちで、うまれてきて本当によかった、といえる『恩を無駄にしない』という生き方をしていくことが大切なのではないかと思います。

たくさんのご恩を感じ、いただきながらそのご恩を無駄にしない『いのち』を大切に歩んでゆきたいと思います。