「生きててよかった」(上旬) 食べるのに必死

======ご講師紹介======

ノンフィクションライターのジェフリー・S・アイリッシュさん

ノンフィクションライターのジェフリー・S・アイリッシュさんは昭和35年アメリカ・カリフォルニア州生まれ。

エール大学卒業後、清水建設に入社し来日されますが、自分らしい生き方を求めて平成2年に鹿児島を訪れ、甑島で漁師生活を体験。その後、京都大学、ハーバード大学の大学院で学ばれ、7年程前に川辺町へ移住。

現在、ダイオキシンの無害化の仕事に携わりながら執筆活動をされています。

著書に『アイランド・ライフ−海を渡って漁師になる・甑島日記』『漂泊人からの便り』などがあります。

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ノンフィクションライター ジェフリー・S・アイリッシュさん

 いま私がいる川辺(かわなべ)というところは、かなり自分に合ったところなんです。

私はそこにようやくたどり着いたからこそ、八年も住んでいるんですね。

いずれは、例えば母が年を取っていく中で、母の近くに一、二年ぐらい住みたいというのはありますけれど、今のところはすぐにでも次に行こうと思うようなところは特にないですね。

なるだけ川辺をベースにしていたいと思います。

 私が川辺の生活のどこにひかれているかというと、ひとつは人間と自然環境との接し方ですね。

特に田舎のおじいさん、おばあさんは自然というか、自然のリズムの中で生活してます。

だからそれは環境に本当に優しい生き方なんです。

たまにビニール袋とかを燃やしているおじさんがいたりしますが、ほとんどの人は環境に負担のない生活をしています。

 それから田舎だと社会に参加できます。

例えば東京なんかに行ったら、強い気持ちを持っていてもそれを表に出すとか、自分の住んでいるところ、コミュニティーに影響を与えるというのはかなり難しいと想像できます。

でも田舎であればある程、人が少ないことによって、自分が社会あるいはコミュニティーの中に参加したり、影響を与えることができるんです。

そういう話を高校生に講演とかで話したりします。

高校を卒業してから、自分の価値観とか、自分の優先順位とかを確認していくのがその人生だと思いますので。

 先日私はネパールに行ったんですが、そういうところを見てくると、本当に多くの国の多くの人は、食べるのにも必死だというのがわかります。

我々みたいな今の若い世代は、前の世代が頑張ってくれたことによって、そういうことは一切考えることなく、かなりぜいたくなレベルで自分の可能性を考えることができるということです。

 鹿児島別院の近くに、「アイデア室」という短大みたいな感じの一年間の学校があります。

そこは高校生を対象に、高校を卒業して社会に出るまでの間、これからどうしようかと迷っている子どもたちをたくましくして、そしていま自分たちが住んでいる日本を知り、日本という国を本当に誇れる教育を目的とした学校です。

 私はそこで一年ぐらい前から、私が創った田舎学というのを教えています。

その一年間で私が楽しみにしてたことが数週間前にありました。

ある講義の一環で、十九歳ぐらいの女の子と男の子をみんな連れて、川辺の入り口付近で九十二歳の竹細工の友人とか、石切り場の友人のところを訪ねていきました。

 私の住んでいる土喰(つちくれ)の集落には、お茶を飲む時間に連れて行ったんです。

それで私、おばちゃんたちに声をかけました。

漬物だけでも家から持ってきてくれればと思って公民館に二時頃行ったら、朝八時からみんなが準備してたそうで、ふくれ菓子を食べてました。

あと若い人が来るというんで、張り切ってコーヒーゼリーとか、里芋の煮物とかを作ってきて、かなりのご馳走が並んでいました。