「シラス台地に受け継がれる鹿児島の心と暮らし」(中旬) 近代化の反省点

雅叙苑観光有限会社代表取締役 田島健夫 さん

 それで今もやり続けていることは、お客さまに思いを伝えるためにお花のペンダントをあげています。

これは僕が一番苦しいときに、お客さまに思いを伝えるためにやっていたんですよ。

今も空港あたりに行くと、お花のペンダントを付けているのを見て

「雅叙苑に行かれんですか」、

東京でも

「雅叙苑に行かれたんですか」

と声をかけられるお客さまがいらっしゃるそうです。

 何が大事なのかということをお客さまに提供し続ける。

それは母が僕に教えてくれたことです。

「あなたには出来るんだ。

そのときにどんな素敵な夢を描くの」と。

しかし、残念なことが二つあります。

日本グランプリを受賞したとき、母に記憶がなかったことです。

もう一つは、世界に飛び出すという夢はかないましたが、ただ僕が今日夢見たことしか考えつかなかったのだろうか。

もう少し他に夢を思い描くべきじゃなかったか。

何か他にも夢が合ったのではと、そういう後悔があります。

 もう僕は六十を越えました。

これから世界に通用するリゾートを作って、鹿児島の文化を絶対につぶさない。

現在、天空の森と雅叙苑とで七十名ぐらいの人が働いていますが、やっぱり頑張れば出来ます。

年をとったというのは言い訳ですよ。

 年間三千人までしか旅行者が入れないという、ブータンという国にたまたま行くことが出来ました。

そこの犬や猫の目が違うんです。

野良牛もアヒルもみんな本当に優しい。

本当にいい風が漂っている。

そこの子どもたちとお話して

「ありがとう、鉛筆をあげる」

と言うと、

「いらない」と言うんです。

 何故だろうと思って通訳の人に聞いてみたら

「鉛筆をもらったら消しゴムが必要になる。

また次の筆箱が必要になる。

それが幸せなのかしら。

日本には物があるからそうなんですか」

と答えるんです。

 旅に出ると、自分自身が今まで思っていたことが違ってくる。

自分の思い込みが破壊されるんです。

いわゆる美しい破壊ですね。

これは新しい発見につながると思います。

本当に世界は素晴らしい。

ですから、是非いい旅をしていただいて、自分の思い込みを外してほしい。

「旅はもう一人の自分を発見する」

とか、

「旅は人生を達人にする」

という言葉もありますからね。

 旅行で来られたお客さまから、後日お手紙を頂きました。

「野菜研究の専門家ですが、野菜の持つ本来の味を十分に引き出し、味覚に昇華させた力量に敬服しました。

食欲の満足度百パーセントの経験は初めてのような感じを受けました。

また、明治・大正・昭和初期にかけた住居環境にも驚かされました。

人間復活というか、近代化の反省点に気付かされた至福の空間を提供していただき、満たされた時間を過ごすことができました。

本当にありがとうございました。」

これは、鹿児島市内の方からのお手紙です。