「シラス台地に受け継がれる鹿児島の心と暮らし」(下旬) 日本を変えよう

雅叙苑観光有限会社代表取締役 田島健夫 さん

 私どものスタッフがどうしてこんなにお客さまから評価されるかというと、お野菜を作る人は

「なぜこんないいお野菜ができるの」

とお客さまに聞かれると、

「金肥をまくのではなく、みんなが集めてくれた木の葉と鶏糞を混ぜて三年四年かけて作ったものを、若い人たちが運んでくれる。

あの人たちがいてくれるから」

なんです。

 お客さまは敏感です。

「これが本当の野菜ですか。

私たちは何を食べていたんでしょう」

と言われるぐらい、お野菜には敏感に反応されます。

そして、お料理を作る人たちは、お客さまに差し上げるためにいいお野菜を作ってもらわないと、いいお料理が出来ないんです。

だから

「こんなお料理はどうして出来るの」

と聞かれると、

「材料がいいもので」

と答える訳です。

 接客する人たちは、お客さまに素敵な笑顔で接する。

そして、お料理を作った人たちの気持ちを素直に受け止めて、もう一つ自分の気持ちを込めて差し上げる。

だから雅叙苑はすごいんだと、僕自身そう思っています。

『世界のスパホテル』という本を書かれた、せきねきょうこさんと二、三日前にお会いしましたが

「ここは本当に素晴らしい。

決して施設・設備じゃなく、思いとか心が素晴らしい。

一人ひとりが個性的です」

とおっしゃって下さいました。

確かにみんなアクの強い人ばかり。

それは個性ですよ。

お野菜など、一生懸命作らないと良いものは出来ない。

でも肥料を作ってくれる人がいるから、その人に有り難うを言わないといけない。

お料理を作ってくれる人、お客さまに運んでくれる人、それぞれが

「あなたがいるから」

という思いでつながっている。

世間の人達は、みんなこれを忘れているような気がします。

雅叙苑の鶏を見ていますと、学ぶことがたくさんあります。

鶏の親は、ある日子ども達の前からふっといなくなるんですが、子どもたちはそのとき既に自分が生きる術を知っているんですね。

次の世代がどうしたら生きていけるのかということを、しっかり子どもたちに教えているような気がします。

私たち人間は、次の世代に何を引き継ぐんでしょうか。

鹿児島は厳しいシラス台地の中で、日本を変えようという人たちが出たんです。

自分たちの血には、脈々と何かが流れているような気がします。

鹿児島はそういう素晴らしいものを持っているということに、今一度自信を持っていただきたい。

次の世代にコンニャクの作り方でもいい。

何かを伝えて下さい。その中で、先輩たちが残してくれたものをどうするのが一番いいのか。

それを考えることが大事なんじゃないかなと思います。