「いじめってなんですか」〜いじめに対する大人の認識にについて〜(上旬) “無視”それは恐ろしい心へのリンチ

======ご講師紹介======

 小森美登里さん(NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事)

☆ 演題 「いじめって なんですか」〜いじめに対する大人の認識について〜

ご講師は、いじめのない社会の実現を目指す、NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事の小森美登里さんです。

小森さんのお話を通して、いじめの問題を私たち一人ひとりが考えていきたいものです。

小森さんは昭和三十二年、神奈川県のお生まれ。

小森さんがご主人と一緒にこの活動を始められたきっかけは、平成十年七月に一人娘のお子さんをいじめによる自殺で亡くされたことに端を発します。

娘さんが亡くなられる四日前に残された「優しい心が一番大切だよ」という言葉を、一人でも多くの人に伝えるために、現在も学校を中心に活動を続けておられます。

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 今、私は講演などで話をしていますが、まだ一人娘の香澄が死んでしまってもうどこにもいないということを、まだ事実だと信じることが出来ずにいます。

生きている間、ずっとそれが事実だと納得することはないと思います。

でも香澄とは、もう会えない。

香澄がいないのは事実なんだと、くやしいけれど、現実に押しつぶされそうな気持ちになることがあります。

 でも、香澄はその肉体に替えて、私に大切なものを残していってくれました。

それは心というものを考えるきっかけです。

香澄が私に、あんなに痛くて苦しくて悲しかった心ってなんだろうと、問いかけているように思えて仕方がないのです。

あの子が人生に替えて私に残していった大きな宿題だと思います。

 私たちには感情があります。

みんな泣いたり、笑ったり、怒ったりすると思います。

この感情を感じる場所が心なのでしょう。

私たちには肉体があります。

そして心があります。

その二つがそろって、一つのいのちなのではないでしょうか。

心は肉体みたいに、傷口や赤い血が流れるのが目に見える訳ではありませんが、見えないだけで心も傷つき、血を流し続け苦しむものだと思います。

 心の痛みというものをまだ経験したことがないという人は、一人もいないのではないかと思います。

心が元気でないと、人は幸せを実感出来ません。

心は、悲しみに沈んでいる人を励ましたり、支えあったりする力を持っていますが、同時に使い方を間違えると相手を傷つけたり、死まで追い詰めてしまう凶器になってしまうことがあります。

 私はいつも子ども達に講演をするとき、ある質問をしています。

それは

「よくいじめられる方にも原因や問題があると聞きます。皆さんはどう思いますか」

というものです。

以前の私は亡くなる子に対して、この子はいったい何が原因でいじめられたんだろうと思っていた大人でしたが、同じ質問をしたら大人のみなさんはどのように思われますか。

 よく大人はいじめている子どもに対して、その理由を聞きます。

そうすると、いじめている子はその理由を探して、あいつは変だからとか、むかつくからと言います。

変わっていたら、むかついたら、そこに理由があれば人を傷つけてもいいのでしょうか。

人に傷つけられても仕方がない理由。

人を傷つけてもいい権利。

そんなものを持って生まれてくる人は一人もいません。

みんなが幸せに、自由に生きる権利を持って生まれたいのちだと思います。

 次に、今でもよくあるのですが「無視」といういじめがあります。

この無視といういじめについて、ある精神科の先生が私に教えてくれたことがあります。

人間は孤独がとても苦手な生き物で、ずっと無視され続けていると心が病気になってしまって、最後には自分を死へと追い詰めてしまうということです。

 リンチというと肉体への暴力だと思われるかもしれませんが、無視というのは恐ろしい心へのリンチなのだそうです。

その無視をしている子に注意しますと

「やってるのは私だけじゃないもん。みんなもやっているもの」

なんて答えてくるんです。

人数が多ければいいのかと言いたくなります。

されている身になればすぐにわかりますが、一人に無視されるだけでもすごく心地悪いですよね。