仏教を開かれたお釈迦様。
そのお釈迦様の説法の特徴は、「対機説法」や「応病与薬」と言われるように、その人の能力や理解力に応じて、あるいはその人の悩みや苦しみに応じて法を説いていかれました。
仏教は成仏教、すなわち仏に成ることを願いとする教えです。
仏とは亡くなった方を指すというのではなく、悟りに至ることを意味しています。
ですのでお釈迦様はその人がどうすれば仏に成れるかという方法を、その人に最もふさわしく適した教えや仏道を示して説いていかれました。
この人にはどんな言葉や表現がよいのか、この人は今何に悩み苦しんでいるのか。
一人ひとりとよく向き合い、その人に応じて教えを説いていかれましたので、当然その内容も様々であったことは言うまでもありません。
今多くの経典が残っているのは、お釈迦様が亡くなった後、多くのお弟子さんたちが集まり、それぞれお釈迦様からどのようなことを聞いたか、その確認が行われました。
私はこのように聞きました、私にはこのように説いてくださいましたなど、ありとあらゆるお釈迦様の説法の内容が多くのお弟子さんらによってまとめられ、編纂され、いわゆる「お経」と呼ばれ現代に伝わっています。
お経の冒頭が「如是我聞」(我かくの如く聞く)という言葉で始まるのもここに所以があります。
仏教を冠とする教団、宗派は、どの教団にも全て「根本聖典」があります。
この教団はどの経典を拠り所にしているのか、どのお経を教えの中心としているのか、必ずその根拠となる経典があります。
浄土真宗でいいますと、『浄土三部経』(「仏説無量寿経」「仏説観無量寿経」「仏説阿弥陀経」)がそれにあたります。
そのようにして、多くの宗派が存在するというのも、お釈迦様の対機説法や応病与薬と譬えられる説法によって様々な形の仏道が示されていると言えます。