先日、「経験したことのない強さの台風」が襲来しました。私の住んでいる地域は、もともと大雨や台風によるがけ崩れの多いところです。これまでにも大雨や台風のたびに、通行止めをはじめとして、断水・停電・浸水・土砂の流出などの被害にあいながら、何とか乗り越えてきました。
そんな私たちですが、「経験したことのない強さの…」と聞くと、いったいどんなこと(災害)が起こるんだろうと、大きな不安を抱えながら台風の襲来を迎えました。もちろん、できる限りの台風対策を施しました。外回りの片付けをはじめ、水や食料品などの確保、停電対策…。
そして、ついに台風がやってきました。とはいえ、進行速度が遅かったこともあり、あまりに準備しすぎて待ちくたびれたほどでした。通過する際は、予告されていたより勢力が弱まっていたので、幸い大きな被害はありませんでしたが、やはり停電が長引きました。そのため、冷蔵庫は一度も開けませんでした。食事は、インスタントばかりだと飽きるので、鍋で炊き込みご飯を炊いたり、家庭菜園の野菜と乾物で炒め物を作ったりしました。アウトドアに興味のある息子は「サバイバルみたい!」と大喜びでした。
テレビを見られないので、ランプの明かりの中で、家族みんなでラジオを聞いたりしゃべったりして長い夜を過ごしました。子どもたちが「パパがこんなに話すなんて珍しいね」と、嬉しそうでした。
困ったのは、お彼岸を迎えることでした。台風通過の翌日がお彼岸の入りの日でしたので、暗闇の中、本堂で準備をしながら「何とか電気が来てくれないか…」と願っておりましたが、ついに停電のままお彼岸の入りを迎えることになりました。
内陣のろうそくの明かりと、窓からの自然光でお彼岸の法要をするのは父も初めてだったそうです。それでも、お参りの方が20名ほど来られました。皆さんもまだ、停電生活の中をいらっしゃったのです。法要の喚鐘を聞いた近所の方が、「こんな時でも、ちゃんとお彼岸の法要がつとまるんだと思った」と、後で話していらっしゃいました。
災害時でも、いつもと同じ「日常」があることは、何かと心強いことだと知らされました。これからもお寺は、地域の「日常」でありたいと思うことです。
今回の「経験したことのない台風」は、私たちにいろんなことを教えてくれました。