「介護の現場から世界が見える」(下旬)介護とは、当たり前の生活をお手伝いすること

そこで二つ目。

それは

「仲間がいる場所」

に出かけていくということです。

仲間というのは同じように年を取ったり、ボケがあったり、体に障害を持つ人のことです。

自分と同じ人がいる。

大変だけど、頑張って生きているじゃないかということで、こんな体だけど、自分ももう一回生きて行こうという気持ちになってくれる訳です。

専門家ばかりいても老人は生き生きしません。

だから病院にいる老人は、あまり元気になりません。

家に閉じこもらず、仲間のいる場へ出かける。

これがデイサービスセンター、デイケアセンターです。

あるいは私たちは宅老所と呼んでいます。

どんなに寝たきりでも、認知症があっても、そこに来ていただけば全然違うんです。

認知症はもちろん治りませんが、問題がなくなってニココニ笑顔が出てきます。

いくら寝たきりでも、車椅子に座って生活できない人はいません。

座ってご飯を食べて、排泄して、普通のお風呂に入るという生活作りをちゃんとやっていくと、目が輝いてきて、ボケと寝たきりのセットにはならないという人がいっぱい出てきます。

これまでは、病院で上を向いて寝ているのを何とかしてあげるのが介護だと思っていたけど、そうじゃないんですね。

寝たきりにしてはいけないのが介護。

年を取って体が不自由でも、だからこそ、時には外に出て、人とちゃんと触れ合う当たり前の生活にどれだけ近付けるのか、それが介護という仕事です。

認知症だと言われている人たちも、年を取って物忘れがひどかろうと、何とか自分らしく生きていきたいと一生懸命になっている人たちなんです。

だから、そのお手伝いをしてあげるというのも、今問われている介護の役割だと考えています。

自分の世界から出る。

独り言を言わなくてもいいように、みんなが訪ねていってあげる。

いい人がくれば、布団から出てくれるでしょう。

そして家から出て、地域へ出て行って、人と触れ合う。

そういう豊かで相互的な関係の中にいる人は、ボケも寝たきりも進行しないですね。

ボケも寝たきりもなくても、人間関係が乏しくなっていたり、家から出ないという人は、これはもう時間の問題だという風に考えていいと思います。

だから、ボケにも寝たきりにもならないために、今日来ていないお友だちに、ぜひこの話を伝えていただきたいと思っております。