「子供を叱れない大人たちへ」(下旬) 怒られるのが嫌

法務省少年篤志面接委員 桂 才賀 さん

 『現代青少年起筆川柳集足利編』。

これは中学生の作品なのか、小学生の作品なのか、一切書いてないんでわかりません。

みなさんで勝手にご判断ください。

 「勉強のやる気の失せる母の声」「勉強中顔出す父はただの邪魔」「叱る時ひとこと言わせて私にも」「わけ聞かず頭ごなしに叱るなよ」「片付けなさいと言うけれど自分の物も片付けろ」「勉強せい昔はあんたも言われたの」「世間体事件きっかけすぐばれる」

 先生方に対する作品も多いのに驚きました。

いかに今の子どもが先生に対しての不満が多いかってことです。

私がその作品の中で特に気に入ったのがこれです。

 「この人は向いてないのに教育者」

またこんなのもありました。

「立ち上がれシルバーシートの高校生」

 これは誰が考えたかお察しになれますよね。

高校生に立ち上がれって言ってんだから、中学生か小学生の作品っていうことですよね。

たくさん作品が出来上がり、みんなが選んだダントツトップの作品が、実はこれです。

 「たまにはよ叱ってみろよ大人たち」

 「叱ってるよ」って言う方がほとんどなんですが、いや実は叱ってないんです。

怒っているんです。

「怒る」も「叱る」も一緒じゃねぇかって言う方がいますが、大違いなんです。

 「怒る」というのは、自分が気に入らない状況になった時に爆発してる状況です。

「怒る」っていうのは、年輪、教育、教養がなくてもできるんですね。

子どもでも怒れるんです。

 「叱る」というのは、辞書に「過ちを正してあげること」となっているんです。

過ちを正してあげようとする時は、カッかしてちゃできないですよ。

カッかしてるってのは怒ってるんです。

叱ってやる時は、怒りを抑えなきゃならないんです。

 「怒る」と「叱る」じゃレベルが全然違うんです。

だからそれをちゃんと子どもたちが訴えている訳ですよ。

「大人、先生、怒ってばっかりじゃん。

叱って見ろよ。

たまには叱ってくれよ、怒ってんじゃなくてよ」。

誰でもそうですが、彼らたちも怒られるのが嫌なんです。

でも叱ってくれているのは、自分のことを思ってということをちゃんとわかっています。

怒っているのと叱っていることの区別を子どもはしっかりわかっているんです。

 ところが、今のほとんどの大人、ほとんどの教師、ほとんどの警察官、こういう連中は怒ってはいますが叱っていないんです。

「たまにはよ叱ってみろよ大人たち」

 ぜひみなさん、叱ってやってください。

怒るんじゃなくて、叱ってやってください。