======ご講師紹介======
田宮榮一さん(警察研修社会長)
☆ 演題 「安心安全なまちづくり」−治安回復は健全な家庭の構築から−
昭和七年山形県生まれ。中央大学法学部卒業後、昭和二十七年から警察官としての道を歩まれ、平成元年の退官までに成城署長、鑑識課長、捜査第一課長、新宿署長、警察学校校長、警ら部長などを歴任されました。
警視庁退官後は、平成十一年までヤマト運輸株式会社に勤められ、現在日本テレビで事件報道の客員解説者をお務めになりながら、各メディアで事件捜査の解説をしておられます。
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警察研修社会長 田宮 榮一 さん
治安をよくするということは、警察や検察官だけで出来るものではないですね。
やはりみんなが力を合わせて、わが町を安全にしよう、安心できるまちづくりをしようという思いで励むことが大切なんじゃないでしょうか。
ところが、残念ながら何かあるとすぐに反対する者がいっぱいいるのが現実です。
例えば、安心安全な町づくりのために監視カメラ、防犯カメラを設置するとします。
この防犯カメラが今までにいかに犯人を絞り込んでいくときに役に立ったかというのは、たくさん事例があります。
長崎で子どもが子どもを殺した事件がありましたが、あれも商店街に設置された防犯カメラが記録していました。
しかし、あれは子どもを捕まえるために付けていたわけではなく、店が閉まった後のシャッターに落書きをしたり、蹴飛ばしたりする不心得者を監視するために設置していたようです。
この防犯カメラが世界で一番多いのは、イギリスのロンドンです。
ロンドンに行きますと、防犯カメラがありまして「あなたは監視されている」と書いてあったりするんです。
以前イギリスで起きた地下鉄テロ事件は、比較的早く犯人が検挙されました。
それは設置された防犯カメラが犯人の姿をいたる所で記録しており、その映像を分析することで犯人を割り出すことが出来たからなのです。
ですから、本当に必要な時に防犯カメラの映像を活用することは、非常に重要なことだとお分かりいただけることかと思います。
ところが、防犯カメラなどは「プライベートの侵害だ」と反対する人も大勢います。
表を歩いていれば、カメラに自分の姿が写るのは当然じゃないですか。
それが嫌なら表に出るなと言いたくなりますよ。
あるいは表でよほど悪いことをしているかでしょうね。
後ろめたいものがあると思っているからこそ、カメラに写っては困ると思うんでしょう。
あくまでカメラの映像が垂れ流しになって、誰でも見れるようになる状態が悪いのであって、存在そのものがいけないわけではありません。
運用方法の問題であり、ちゃんとした管理をしながら使うということは、とても重要なことだと私は思います。
次に、アメリカで提唱された「割れ窓の理論」のことをお話します。
あるビルの窓ガラスが一枚割られたとして、たった一枚だからと何もせずに放置しておけば、いずれそのビルの窓は全部割られてしまうという、これが「割れ窓の理論」です。