「大山のぶ代の おもしろ人生あれこれ」(下旬) 一世代飛び越す

 私は二十六年間も「ドラえもん」をやったおかげで、自分の子どもは一人も持てなかったけど、日本中に子どもがいます。

どこへ行っても「ドラえもん」のお姉ちゃんと言ってくれますが、そのたびに私は

「あなた達のお母さんより年上だから『ドラえもん』のおばあちゃんなのよ」

と言うと、

「いや、『ドラえもん』のおばちゃんだよ」

と言ってくれます。

 みんないい子たちだなぁと思いますし、しかも「『ドラえもん』のおばちゃんへ」というお手紙がいっぱい来るんです。

私は自分の子どもを産めなかったけど、私にはこれだけの数の子どもが日本中にいると思うと、とても元気になるんです。

 しかし、その子どもたちは両親とも仕事を持っている。

ご飯もてんでバラバラに食べる個食の時代になってしまった。

子どもたちは、ご飯の時に大人がしゃべっていることを聞いて、いろんなものがその子どもの中に残って行くのに、もったいないなぁって思うんです。

 たまたま八百屋さんでシイタケを買おうとしていたら、とっても可愛らしい大学生ぐらいのカップルが来たんです。

すると女の子がシイタケを取って、「これどうしようか」なんて言っていたら、男の子が

「シイタケみたいなきのこ類は、全部周りに菌が付いているから洗っちゃいけないんだよ。

軽くフキンで拭くだけですぐ料理していいんだよ」

と教えると、

「汚いじゃない。どんな所に生えていたかわからないのに」

なんて女の子が言い返しているんです。

 私はそばで聞いていて、男の子の味方をしたいと思ったんですけど、男の子も負けていなくて、

「うちのおふくろがそう言っていたよ。

シイタケとか他のきのこ全部そうなんだって。

その菌に旨味があるから、それしっかり洗っちゃったらもったいないんだって」

と言ったら、女の子も納得したんで、口出ししなくて良かったと思ったんです。

 そんなことを代々しっかりと親が伝えてくれる。

だけどその親はいま共働きで忙しくて、子どもと年中いっしょにいる時間が少ない。

その時に、私たち老人がパワーを出すべきだと思うんですよね。

日本に限らず世界中も、とにかく人類の文化というのは、親から子へ伝わるものではないと思っているんです。

なぜなら、親は子育ての大変なさかりで、生活するために一生懸命働かなくちゃいけない時期です。

だから、子どもにかかわる時間が少なくなる。

 ところが、ある程度の年になって引退し、時間もあって好きな遊びとか自分の趣味に生きようなんて思っているおじいちゃんおばあちゃんは、長く生きてきた間にいろんな知惠を身に付けている。

その人たちが孫と仲良くして、面倒を見ながら自分の持っているすごいものを一世代飛び越して教えておけば、孫はまた一世代飛び越してというように、ちゃんと日本の文化は伝わっていくと思うんです。