「ホスピスの現場から」

〜地球・いのちへの視座〜(下旬)

死を自然の摂理として受け止める

 ドイツに

「共に苦しめば半分の苦しみ。共に喜べば倍の喜び」

ということわざがあります。

一緒に苦しみ、一緒に喜び、一緒に悩む。

それが大事だと思います。

ホスピス緩和ケアというのは、ともに歩むことで生の充実を支える。

限りあるなかで意味を見出す。

そして最後には安らかな死を迎えるということなのです。

 「画竜点睛」という故事成語をご存知でしょうか。

これは中国からきた言葉ですが、もとになった故事というのは、ある有名な絵描きが壁に竜を描いたとき、最後の仕上げにその竜に瞳を描き入れたところ、壁の竜はたちまち天に昇って行ったというお話です。

 これは物事の仕上げとして、肝心なところに手を入れることをたとえたものですが、それが私たちホスピス緩和ケアでしていることかなと思っています。

やはり一番最後というのは、本当に人生にとって大事ですし、最後はいい形で終わらないと辛い思いはずっと続くということです。

 人生には、良いことだけではないですよね。

苦しいこともたくさんあります。

「苦楽共存」というように、苦しいことと楽しいことは共存しています。

そして試練や悲しみ、失敗を通して成長することが出来るんです。

逆にそういう苦しみや挫折がないと、人間が本当に成長することは出来ないんです。

 写真のネガとポジの関係のように、写真のポジというのはネガがないと出来ないですね。

それと同じように、物事の対となるマイナス部分がないとプラスにならないということです。

そうやって、いろんな意味で視点を変え、視野を広げていく。

時間軸、そして家族、地域、地球というような空間的な視点で物事を見るということです。

 私たちが今ここに生きているということは、実はとても不思議なことであると気付かされます。

自分がこの世に誕生するまでに、どれだけのご先祖がいのちをつないでくれたか想像してみてください。

もしそのうちの一人でも欠けていれば、自分はここに存在しえなかったのです。

 そのことを思うと、私たちがここにいることは決して当たり前なことではありません。

奇跡に近いことなのです。

そして、あらゆる環境に感謝して、長い歴史と循環を考えましょう。

生と死はつながっています。

死を自然の摂理として受け止める。

それは、今ここで一つひとつを大切にしていきましょうということです。