仏教の人間観では
「人生は苦である」
と受け止める見方が基本的な姿勢としてあります。
仏教の根本思想である四つの旗印(「四法印」)の一つが
「一切皆苦(すべてのものは苦である)」
ということによってもそれは理解できます。
この
「苦」
は、サンスクリット語では
「ドゥッカ」
といい、さまざまな経典に種々の概念をもって分類されています。
例えば、
二苦
(内苦=自己の心身より起こる苦、
外苦=外的作用により起こる苦)、
三苦
(苦苦=不快なものから感じる苦、
壊苦=好きなものが壊れることから感じる苦、
行苦=ものごとが移り変わることを見て感じる苦)
などがあります。
この
「四苦八苦」
もその概念による苦の分類によるものです。
仏伝によれば、お釈迦さまは
「生・老・病・死」
する人の在り方に深く悩まれ、この
「生老病死」
を四苦として大きく問題とされ、その解決のために29歳の時に出家されたと伝えられています。
さらにこの四苦に
「愛別離苦
(あいべつりく/愛する者と別れる苦しみ)」
「怨憎会苦
(おんぞうえく/憎んでいる人と会わなければならない苦しみ)」
「求不得苦
(ぐふとっく/求めたものが得られない苦しみ)」
「五蘊盛苦
(ごうんじょうく/すべての苦しみ)」
の四苦を加えたものを
「八苦」
といいます。
つまり前の四苦は、人間の生き物として起こる苦しみであり、後の四苦は、人間が人間であるために味わう苦しみを述べたものと言えます。
このよう四苦八苦には、すべての苦しみが凝縮されています。
この
「苦」
とは、ひとことで言うと
「私の思い通りにはならない」
ということですが、まさに
「苦」
に満ちているこの人生において、
「苦」
の根源に深く思いを寄せていくときに、私たちはかけがえのないこの世の生き方を見出すことができるのではないでしょうか。