皆さんは、小橋建太という人をご存知でしょうか。
この人は有名なプロレスラなんですが、小さい頃から非常に苦労をして来られました。
両親が離婚されて、貧しい中で生きてきて、プロレスに活路を見出して頑張っていた最中に腎臓ガンになってしまったんです。
手術は成功しました。
その上で、この人は
「再発の恐れはある。
でも、何もせずに恐れながら生きて行くという選択肢は私の中にはない。
やりたいことをやって1、2年しか生きられなくてもいい。
私の中のポジティブな気持ちがネガティブな気持ちを少しだけ上回っている」
と言ったそうです。
自分の健康状態をしっかりと把握し、納得できるまで医師と対話を続けることを重視して、リングに復帰して必死に生きることを選んだ小橋建太さん。
僕は、この人は立派なレスラーだなと思いました。
僕はあまりプロレスの世界のことは知りません。
でも、こういう形で必死に生きることが、病気を克服する一つの満ちじゃないかと思います。
それから、皆さんもご存知の鳥越俊太郎さんですね。
この人も僕はすごいと思います。
それは、ガンに冒されても
「不安はありません。
だって取ればいいんだもん、そんなもの」
といえるところです。
ガンは間違いなく、大腸から肺から肝臓と、彼の体のいろんな所に転移しているんです。
でも、まだテレビにも出ていますし、生きていますよね。
おそらく不安はあったでしょうが、それでも
「闘うのではなく、付き合うべきもので、平静な心を持ちさえすれば、恐れるに足らず。
ガンを特別視せず、冷静に向き合えば、全く違ったものが見えてくる」
という心境に、その通りだと思いました。
こういう見方、生き方もあるんだなと本当に感心しました。
一方で、最近の抗ガン剤は非常に効くようになりました。
副作用もありますが、それを乗り越えたら、3年、5年、10年と生きている人もけっこういますし、完治する人もいます。
だからガンになったからといって、諦めるのは早すぎます。
一生懸命頑張って生きれば、次のステップというか、未来が開けるというのも事実なんです。
それから、僕にとって非常に印象的な患者さんを紹介します。
僕の義理の親父さんです。
ちょうど3年前の3月10日に口腔ガンで亡くなりました。
本人が医者でしたので、自分の症状はよく分かっていたようでした。
最期のときにも、自分で体のことはよく分かるらしく、頭は非常に鮮明でした。
それで
「点滴も何もしなくてもよか」
と言っていました。
これは、自分の病院だから言えたことなんですが、普通の病院ではなかなか出来ないことだったでしょうね。