「子どもに語るいのち」(中旬) 死を語る授業

 そしてもう一つ。

市立図書館で出会った

『生の授業 死の授業』

という本があります。

これは金沢市の小学校の金森俊郎という先生がお書きになりました。

この先生は普通だったら、校長先生になってもおかしくない年齢の先生ですが、ずっと定年退職まで一教師でいたい。

ずっと子どもたちと最後まで向き合っていたい。

というので、とってもユニークな教育実践をされている方です。

 一昨年でしたか、NHKスペシャルで金森先生の教室を一年かけて取材した番組で放映されたんです。

それを見たうちの学生たち、小学校教師を目指している学生たちがこの先生の授業をビデオで見て、金森先生をうちの学校になりたいって言うので、何十通もの手紙を書いたのです。

とてもご多忙な先生なんですけど、うちの学生たちの熱意に動かされて、鹿児島国際大学に来て講演をしてくださいました。

 私が最初にこの

『生の授業 死の授業』

という本に出会ったのは、今から十年ほど前になります。

生の授業っていうのは、この表紙写真じゃちょっとわかりにくいかも知れませんけど、小学生たちが白い産着の赤ちゃんを抱っこしている写真があります。

この金森先生の学級では、お腹の大きなお母さんを学級に招いて、お腹を触らせてもらって、

「おばちゃん、元気な赤ちゃん産んでね」

とか、そういうふうに励まして、それで生まれた後にまた赤ちゃんを学級に連れてきてもらって、みんなで代わる代わる抱っこさせてもらう、そういう授業をしたのです。

 そして、そのクラスが付の年、また金森先生に受け持ってもらいます。

今度は末期ガンの患者はで当時50歳の泉沢美枝子さんという、乳ガンが体中に転移して自分自身も、もういのちが長くないってことを自覚されている方に来ていただいて、いわゆる死を語る授業というのをされたんだそうです。

その授業がされた当時は、今から10数年前ですから、おそらく日本では初めての授業だったんではないかなと思うのです。

今では、堂園先生も患者さんを小学校の教室に連れて行っていのちの授業をやっておられます。

 私はそれに出会って、私ではもう生の授業はできないけれど、死の授業だったらできるかもしれないという風に思ったんです。

それで、金森先生に手紙を書いたんです。

泉沢さんはその後、亡くなってしまったんですけど、本の中でしかお会いしたことのない泉沢さんの遺志を継いでそういう授業をやりたいなと思って授業を始めたのです。

 今の子どもたちは、自分自身の存在に自信を持つということが出来ないのではないかと思います。

中学校や高校などに行くと、

「自分は一度死のうと思った」

と言う子ども達が結構いるんですね。

そこで、私の授業ではまず、そういう子ども達に対して、自分たちのいのちっていうのは、どんなにかけがえのない存在なのかってことを伝えるようにしています。

現在は、それがまず大事なのではないかって思うのです。