ご講師:吉村ヴィクトリアさん(宮崎県正念寺坊守)
神道の町として有名な宮崎県の高千穂町。
その中にある浄土真宗の正念寺に入った外国人僧侶が私です。
自分でも不思議なご縁だと思います。
私がこのお寺に初めて来たのは19年前、23歳の時でした。
きっかけは、イギリスで大学の友達が卒業後の仕事説明会に行くのに同行したことです。
それで興味を持った文部省のALT(外国語指導助手)の仕事に就き、日本の高千穂に来て、2年目の夏に正念寺のサマースクールに参加したのが最初です。
日本に来た当初は、日本語が不慣れな上、初めての1人暮らしだったのですごく辛かったです。
特に、最初に勤めた教育事務所は大変でした。
何かしたいと思っても
「女だから」
という理由でダメだと言われたんです。
男女平等のイギリスの家庭で育てられたこともあり、そんな理由で仕事を限定されたり、ダメだと言われたのはショックでした。
最初の1年目はその教育事務所で大変な思いをしましたが、2年目で高千穂高校に転勤になり、そこで素敵な出会いがありました。
職員室で隣の席にいた吉村順正という国語の先生。
この人との出会いから始まって、私は仏教・浄土真宗と出会い、結婚して、子どもを授かって僧侶になり、今ではこのように講演会に来ています。
全てが、最初の出会いから始まったんですね。
彼は第一印象がよかったです。
僧侶だからなのかは分かりませんが、彼は外国人だからとか、女だからとかで態度を変えることなく、普通に接してくれました。
日本語も少し話せるようになっていましたから、そういう優しさは身に沁みました。
彼とは7月に出会い、8月にサマースクールに行きました。
好きになったのはその頃です。
私は、手紙で彼にアプローチをかけました。
「よしむらせんせい」
と、平仮名で書いて、彼の机の上に置いておいたんです。
2・3日後に電話がかかってきて、すごくドキドキしたのを覚えています。
それからお付き合いが始まり、2カ月ほど経つ頃には、
「もう結婚するならこの人しかいない」
と思うようになりました。
交際については、地区のお坊さん達は応援してくれたんですが、彼の家族からは特に反対されました。
私が外国人だというのが問題で、生まれ子どもの容姿なども気になったようですね。
私自身も言葉の問題で苦労しましたが、これが日本で私の選んだ道です。
彼と出会って、彼を愛して、辛いこともいっぱいあるけれども、彼がそばにいたから大丈夫でした。
そして、結婚して私たちの出会いから3人の子どものいのちが生まれました。
子ども達は黒髪でしたが、それでも見た目がハーフだと分かりました。
私が町を歩いていると
「外人だ」
と言われることがありますが、
「外国人」
と言われるより冷たい感じがします。
「“外の人”だから出ていけ」
という感じがして嫌なんですね。
それで長男は小学校のとき、周りと違うという理由からいじめられたことがあります。
見た目は違うけど同じ人間です。
赤ちゃんは、日本でも外国でも同じ泣き声で泣きますし、私もみなさんと同じように子育てしたり、同じことで悩んだりします。
だから、今回のお話の中で、顔のつくりが違ったり、日本語が聞き苦しくても、自分と同じ経験がある。
同じ思いなんだなと感じてもらえたら嬉しいですね。