義太夫、浄瑠璃の古典ものというのは、どうしても
「敷居が高い」とか
「難しい」
「長い」
「分からない」
「眠い」
などと思われがちです。
それでは、自分のやっているものも人に伝わりにくいのではないかと思って、8年前から始めたのが
「創作浄瑠璃」です。
これは、あちこちの土地に伝わる昔話などを浄瑠璃風に書き換えまして、分りやすい言葉で短くまとめるというものです。
長いものでも30分、短いものなら7分くらい、そういうのを作り始めました。
これを作り始めたのにはきっかけがあります。
歌舞伎で演奏すると、舞台が大きいため、どうしてもお客さまとの距離が遠くなり、伝わりにくくなります。
だから、もっと身近な距離で聞いてほしいという思いがありました。
それで「月見の会」というのをやったんです。
大きな料亭で食事付きで三味線を聞いていただくという会です。
三味線2人に語りの義太夫2人で、楽しく演奏させていただきました。
その後しばらくして、参加された方から
「また月見の会を開きますか」
というお電話をいただきました。
最初と同じ人数だと報酬も4人分なので赤字になってしまいます。
それで、私1人でやることになりました。
太夫さんがいないので、必然的に弾き語り形式になりました。
そして
「お客さまに俳句を書いてもらって、その場所でそれを即興で浄瑠璃にしましょう。
面白いかもしれませんよ」
という話になったんです。
それでやってみると、すごく好評でした。
そのとき、こういう風に短いものでも浄瑠璃風にして分りやすくすれば、みなさまに親しんでもらえるのかなと思いました。
それで、だんだん伝わりにくくなっている昔話を浄瑠璃にしたら面白いんじゃんないかなと思って初めて作った創作浄瑠璃が有名な『傘地蔵』でした。
それからもどんどん作りまして、年が明けてから節分にちなんで作ったのが『泣いた赤鬼』でした。
『泣いた赤鬼』というのは浜田廣介さんの童話なんです。
ご本人はもう何十年も前に亡くなっているんですが、その著作権は娘さんの浜田ルミさんが持っておられました。
勝手に作った発表する訳にはいきませんので、ご相談するためにお宅を訪ねました。
そこで創作した浄瑠璃『泣いた赤鬼』を演奏させていただき、発表してもよろしいですかとお尋ねしました。
浜田ルミさんは
「原作に忠実で、とてもよくできている。ぜひこれとを出してほしい」
とおっしゃってくださいました。