平成30年10月法話『本願 老少善悪の人を選ばれず』(後期)

今から50年前、宇宙飛行士の3期生としてアポロ9号に乗り、地球を151周したシュワイカーさんの話です。

宇宙飛行士は多忙で、秒単位で仕事をこなしています。

宇宙船の外へ出て仕事をしているとき、カメラが故障しました。

それを直すまでの5分間、何となく地球を眺めていたそのとき、シュワイカーさんの心の中に強烈に迫ってきたものがあったそうです。

それは、「自分はここに一人でいるのではない。全人類とともに生きているのだ」ということへの実感でした。

「私」という「個」の感情ではなく、「人類的感情」とでも言えましょうか。

このとき実感したことを機に、シュワイカーさんの生き方が大きく変わったといいます。

それから50年経過した現在、この地球上では何が起こり何が繰り返されているのでしょうか。

テレビの衛星放送やインターネットを通して私たちは世界中のできごとを瞬時に知ることができるようになりました。

毎日のように世界のどこかで繰り返されるテロ事件や戦争。

あるいは、人間が便利で快適な生活を追い求めてきた結果として、地球温暖化現象によるさまざまな弊害、具体的には異常気象による自然災害が国内外で頻発しています。

このことは、先に述べた「個」の感情、言い換えると人間中心の「我執」にとらわれすぎた結果が招いたことだと考えられます。

「本願」という仏さまの願いは、大悲の心です。

大悲の心とは、すべてのいのちを分け隔てなく、漏らさずに救うという大いなる仏さまのはたらきのことです。

本願の前には、老少善悪の隔てはありません。

すべてのいのちが、救いの目当てです。

一人でも多くの方に、この如来大悲の本願のはたらきに出遇っていただきたいものです。

合掌